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NEPConによるマレーシア・サラワク州の木材合法性に関するリスク評価

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マレーシア・サラワク州の木材合法性に関するリスク評価
バージョン1.3/2018年5月
https://preferredbynature.org/sites/default/files/library/2018-11/NEPCon-TIMBER-Sarawak%20Malaysia-Risk-Assessment-EN-V1.3.pdf

日本語抄訳版の発行について

この抄訳は熱帯林行動ネットワーク(JATAN)が下記NEPconのレポートのうち、おもに先住慣習権の記述頁を中心に翻訳・発行した。

2021年7月21日発行

A.はじめに

この「マレーシア・サラワク州の木材合法性に関するリスク評価」は、違法な伐採や輸送が行われている地域から木材を調達するリスクの分析を提供するものである。NEPConは2007年から、多くの組織と連携して木材合法性のリスク評価に取り組んできた。
その間、NEPConは60カ国以上を対象とした木材リスク評価を行っている(図1参照)。

図1. NEPConが合法性リスク評価を行った国
図1. NEPConが合法性リスク評価を行った国

リスク評価は、地域の森林合法性の専門家と協力して、森林管理協議会(FSC: Forest Stewardship Counci)とNEPConが共同で開発した評価方法を用いて行われている。評価方法の詳細は、「NEPCon調達ハブ」(NEPCon Sourcing Hub)に掲載されている。

FSC-STD-40-005に基づいて行われるリスク評価では、FSCによって正式に審査・承認され、それが記された項目(または情報)のみが決定的とみなされる。FSC認証取得企業または取得候補企業は、これらの項目・情報をリスク評価に使用し、さらなる検証をせずともFSCの基準を満たすことが可能である。
リスク評価が承認されている国は、FSCの文書「FSC-PRO-60-002b V2-0 FSCによって承認された管理木材のリスト文書」(FSC-PRO-60- 002b V2-0 List of FSC approved Controlled Wood documents)に掲載されている。

すべてのFSCリスク評価は、FSC文書センター(FSC Document Centre)からダウンロード可能である。
本リスク評価は、2014年から2018年にかけてNEPConによって以下のとおり作成された。

NEPConによる草稿作成:2014年12月
利害関係者(ステークホルダー)協議:2018年7月~8月
FSCによる最終承認:2018年5月8日
FSC CW発効日:2018年5月8日

NEPConは当初、2017年8月に「マレーシア・サラワク州の木材合法性に関するリスク評価」を発行した。その後、指標1.3、1.5、1.7、1.16、1.17、1.19のリスクに関する結論を「低リスク」から「特定リスク」に変更するなど、評価の修正が行われた。また、その他の指標についてもリスク情報を追加した。これらの変更は、リスク評価をFSCの最終版に合わせるために行われた。FSCの最終版は、NEPConがFSCと協力して、2017年9月に寄せられた利害関係者からの意見・感想(フィードバック)に基づいて更新している。

B.合法性リスクの概要

木材リスク得点:0/100(2017年)

本報告書では、マレーシア・サラワク州における違法性のリスクに関して、5つの大分類および21の小分類の法律について評価した。評価の結果、以下が明らかになった。

20の小分類において特定リスクが存在する。
ひとつの小分類は低リスクである。

サラワク州の木材リスク得点は、100点満点中0点であった。本報告書で確認された主要な合法性リスクは、伐採・木材収穫活動に関するものであり、伐採・木材収穫を行う法的権利、税金と手数料、伐採・木材収穫活動、第三者の権利、輸送と取引に関連している。

木材伐採を行う法的権利については、以下のリスクがある。

● 慣習地(customary land)や先住民族保留地(aboriginal reserve)は官報で公示されておらず、従って法律で認められていない(1.1)。
● 汚職や縁故主義が、民間企業への土地権利の付与に影響を与えてる(1.1)。
● 永久保存林(PFR: Permanent Forest Reserve)内のコンセッション・ライセンスの付与(1.2)や、すべての木材供給源における伐採許可の発行(1.4)に汚職が影響している(1.4)。
● 管理計画および木材伐採計画に関する要件が守られていない(1.3)。

税金と手数料については、以下のリスクがある。

● 法的に義務付けられている会社所有刻印(property hammer mark)および移動許可証(removal pass)が丸太に付されてない(1.5)。
● 伐採され刻印された木材の量が、支払われた使用料で表される量よりも多い(1.5)。
● 物品・サービス税(GST: goods and service tax)が支払われていない(1.6)。
● 脱税している、または税金支払額が不正に操作されている(1.7)。

木材伐採施業については、以下のリスクがある。

● 永久保存林の地図作成および木材伐採の計画における要件(木材伐採計画の作成における要件を含む)が守られていない(1.8)。
● 国立公園が(違法に)伐採されている(1.9)。
● 環境影響評価(EIA)が実施されていない(1.10)。
● 個人用保護具や救急箱の提供など、安全衛生に関する要件が守られていない(1.11)。
● 移民労働者の法的権利が侵害されている(賃金の不払い、労働許可証のための賃金の不当な控除、長時間労働、標準以下の生活条件、不当解雇など)(1.12)。

第三者の権利については、以下のリスクがある。

● 土地を官報に公示する際に、土地保有に関連する先住慣習権(NCR: Native Customary Rights)が侵害され、保有権が争われている(1.13、1.15)。
● 官報公示や木材伐採の前に協議が行われず、地域の先住民族コミュニティから十分に情報を与えられた上での自由意志に基づく事前の同意(FPIC: free prior and informed consent)が得られていない(1.14)

輸送と取引については、以下のリスクがある。

● 手数料や木材伐採料の支払いを避ける目的で、木材が誤った種類に分類されている(1.16)。
● 輸送中に携行される書類が情報不足であったり、追跡可能性システムが不十分であるため、輸送中に樹種が置き換えられている(1.17)。
● 移転価格が発生している(1.18)。
● 不正なワシントン条約許可証が使用されている(1.20)。

木材供給源の種類とリスク

サラワク州には5種類の木材供給源が存在する。木材の「供給源」を知ることは有用である。供給源の種類によって適用される法律が異なり、また、法律不遵守のリスクに影響する属性がそれぞれあるからである。5種類の木材供給源のリスクを分析したところ、特定の供給源の種類に対して法律が整備されている場合、リスクは同じであることが判明した。

本表は、木材の合法性に関するリスク評価の結果を木材供給源の種類別にまとめたものである。

C.マレーシアの森林セクターの概要 – サラワク州

マレーシア天然資源・環境省(NRE: Ministry of Natural Resources and Environment)から入手できる最新の統計によると、マレーシアの総国土面積は3308万ヘクタールで、そのうち1820万ヘクタール(55.01%)が森林である(MNRE 2014)。本データは2014年のものである。1820万ヘクタールの森林面積は次のように分けられる。

● 全面保護地域および保護地域: 257万ヘクタール(14.12%)
● 永久保全林(PRF: Permanent reserved forest)および永久林: 1160万ヘクタール(63.73%)
● 州有地林: 380ヘクタール(20.87%)

マレーシアの憲法では、林業は各州政府の管轄下にある。従って、各州には林業に関する法律を制定し、林業政策を独自に策定する権限が与えられている。連邦政府の行政権限は、各州への助言や技術支援、研修、調査研究の実施、実験・実証施設の維持にのみ及ぶ。森林管理関連の問題は、連邦レベルでは天然資源・環境省とプランテーション事業・商品省(Ministry of Plantation Industries and Commodities)の2省が管轄している。
マレーシアには、半島マレーシア、サバ、サラワクという3つの地域がある。この3地域の州政府は、農業、土地・土壌の保全、河川、水・森林資源を管轄している。

半島マレーシアは、11の州と2つの連邦直轄領で構成される。これらの州の森林管理に関する法令は、ほぼ同一である。サバ州とサラワク州は自治権を有しており、それぞれに異なる法規制がある。森林管理に対する3地域共通の取組方法は、国家森林協議会(NFC: National Forestry Council)を通じて促進された。国家森林協議会は連邦政府と州政府の間で持続可能な森林管理(SFM: Sustainable Forest Management)の方針と実践を調和させた。なお、現在は国家森林協議会は存在せず、林業に関する問題は国家土地協議会(National Land Council)の会議に組み込まれている。一般に、林業に関する問題は州政府によって管理されているが、連邦政府はマレーシア憲法に基づき、州政府の制定法を調和させ、標準化するための法律を制定することができる。この目的で1984年に国家林業法(National Forestry Act)が制定され、その後、半島マレーシアの各州や連邦直轄領で採用された。

法的には、マレーシアの土地は、州有地、州から譲渡された私有地(開発のために譲渡された州有地)および永久保全林(保存林、保護林(Protected Forest)、国立公園や鳥獣保護区を含む)に分けられる。これらの法的分類には、伐採されたことがない原生林、選択的に伐採された森林、伐採された後に自然に再生した森林、人工林(ゴム、アカシア、その他の外来種のプランテーションを含む)など、様々な種類の森林が含まれる。

伐採や整地・転換は、ほとんどの州有地や州から譲渡された私有地で許可されている。木材生産用に区画された永久保全林でも伐採や整地は許可されているが、その土地は木材種で再植林されなければならない。保護区として区画された永久保全林(水源涵養林、国立公園、野生生物保護区、野鳥保護区など)では伐採は認められない。州政府は、永久保全林の土地を他の目的で使用したい場合、永久保全林から任意の地域を除外する権限を持っている。

これらの種類の土地に関しては、州によって異なる使用許可が発行される(Timber Trade Portal, 2016; MNRE 2014a; MNRE 2014b; Australian Government Department of Agriculture and Water Resources 2017; Australian Government Department of Agriculture and Water Resources 2017a and Australian Government Department of Agriculture and Water Resources 2017b)。許可の主な種類は、天然林コンセッション、プランテーション、農業利用許可である。

1. 永久保全林

a. 長期的な木材生産のために管理される天然林。
b. 木材プランテーションのコンセッションの一環として、またはコンセッション設立のために伐採される天然林。
c. 永久林内の木材プランテーション(例:アカシア、ユーカリ、ラテックス・ティンバー・クローン・ラバーウッドなど)。
d. 生産寿命が終わり、新たな農業・森林プランテーションの準備のために伐採される農業プランテーション(主にゴムの木だが、他の果物の木などの場合もある)。※注:永久林では非常に稀である。

2. 州有地

a. 長期的な木材生産のために管理される天然林。
b. 将来の潜在的な土地利用のために伐採される天然林。土地は将来的に農業や住宅などに利用する可能性を考慮して区画されているが、土地の私有権はまだ発行されていない。
c. 木材プランテーション(※注:稀である)。時折、保存林に設立された木材プランテーションが、後に州有地に切り離されることがある。この土地は通常、木材用の木ではなく、アブラヤシやゴムの栽培に利用された方が収益性が高い。
d. 生産寿命が終わり、新たな農業・森林プランテーションの準備のために伐採される農業プランテーション(主にゴムの木だが、他の果物の木などの場合もある)。

3. 州から譲渡された私有地

a. 長期的な木材生産のために管理される天然林。
b. 将来の潜在的な土地利用のために伐採される天然林。土地所有者は、別の用途に転換される予定の地域を伐採する権利を与えられている。
c. 木材プランテーションは稀である(通常、木材用の木ではなく、アブラヤシやゴムの栽培に使用される)。木材伐採の許可もしくはライセンスが必要である。
d. 民間の「農業」エステートからの木材。これは主にゴムの木のプランテーションで、アブラヤシ栽培あるいはゴムの植え替えのために伐採されるものである(つまり、主に木材用として栽培されているのではなく、主にラテックス用に栽培されているもの)。果実やゴムなどの生産物を目的とした樹木の栽培を含む。

マレーシアの法律は、州有地、州から譲渡された私有地、永久保全林に対する先住民族の慣習的権利の存在を認める場合がある。その場合、慣習法は、州が当該地でいかなる活動も行う前に、慣習的権利の保有者から同意を得ることを義務付けている。これは法律上のグレーゾーンであり、先住民族のどの慣習的権利を主張できるかは依然として著しく曖昧である。先住民族の慣習的権利に関する主張の大部分は州政府に認められていない。先住民族保留地や共同財産権が存在する地域での木材伐採を規制する法律には、具体的な制限が定められていない。その結果、当局はこれらの地域を、権利が存在しない地域と同じ形で管理している。従って、木材供給源の種類の表ではこれらの地域を区別していない。

木材伐採許可証、ライセンスおよび丸太輸送文書を発行するマレーシアの林業・木材関連機関(「上流」)は以下である。

● 半島マレーシア林業局(FDPM: Forestry Department Peninsular)および州の森林局。国家林業政策(National Forestry Policy、1978年制定、1992年改訂)に導かれ、国家林業法(1984年制定)の権限に基づく。
● サバ州森林局(SFD: Sabah Forestry Department)。森林法(Forest Enactment、1968年制定)に基づく。
● サラワク林業公社(SFC: Sarawak Forestry Corporation)およびサラワク州森林局(FDS: Forest Department Sarawak)。前者は1995年のサラワク林業公社条例(Sarawak Forestry Corporation Ordinance)、後者は1958年の森林条例(Forest Ordinance、Cap.126)に基づく。

2012年関税(輸出禁止)令(2号)および2012年関税(輸入禁止)令(2号)に規定されている、木材製品の輸出入ライセンスを発行する認可機関は以下である。

1. 半島マレーシアの場合、マレーシア木材産業局(MTIB: Malaysian Timber Industry Board)
2. サバ州森林局
3. サラワク木材産業開発公社(STIDC: Sarawak Timber Industry Development Corporation)

2016年のマレーシアの腐敗認識指数は49(2015:50)であった。マレーシアの林業セクターにおける汚職に関しては複数の報告がある。汚職は同国で栽培される木材の合法性に関連する問題である。世界銀行の世界ガバナンス指標によると、-2.5〜+2.5の評価において、マレーシアの評価は、「法の支配」が0.64、「汚職の抑制」が0.48、「規制の質」が0.84、「政府の有効性」が1.14となっている。

マレーシア木材認証制度(MTCS: Malaysian Timber Certification Scheme)は、マレーシアの永久保全林を対象とする任意の第三者認証制度である。PEFC森林認証プログラムによって承認され、州の支援を受けている。州有地や州から譲渡された私有地には適用されない。半島マレーシアにおいて、マレーシア木材認証制度は、各州をひとつの森林管理単位として実施されている。2017年5月31日現在、半島マレーシアの11州のうち6州の永久保全林がマレーシア木材認証制度(森林管理)の認証を受けている。サラワク州の3つのコンセッション、サバ州のひとつのコンセッションで認証を受けている(MTCS, 2017)。サバ州木材合法性保証システム(Sabah TLAS: Sabah Timber Legality Assurance System)は、サバ州の第三者認証制度であり、毎年監査が行われている。土地の種類(永久保全林、州有地、州から譲渡された私有地)にかかわらず、すべての木材ライセンス保有者に対してサバ州政府が義務づけている。

FSC-PRO-60-002aの3.3.3項に記載されている情報源リストを検討し、マレーシアの合法性に関する国別リスク評価に関係するかどうか確認した。使用した情報源は以下である。

a) チャタムハウス(Chatham House): http://www.illegal-logging.info/
b) 環境調査エージェンシー(EIA: Environmental Investigation Agency): http://www.eia-international.org
c) EU FLEGTプロセス: http://ec.europa.eu/comm/development/body/theme/forest/initiative/index_en.htm
d) 関連法令の遵守状況に関する政府の報告書や評価結果
e) 関連法令の遵守状況に関する独立報告書や評価結果(例:英国王立国際問題研究所:http://www.illegallogging.org
f) インターポール: http://www.interpol.int/Crime-areas/Environmental-crime/Projects/Project-LEAF
g) 法廷における判例
h) トランスペアレンシー・インターナショナルによる世界腐敗認識指数: http://www.transparency.org/policy_research/surveys_indices/cpi
i) 世界銀行の世界ガバナンス指標: http://data.worldbank.org/datacatalog/worldwide-governance-indicators
j) その他の情報源が利用できない場合には、当該分野の専門家と協議を行うものとする。

関連情報は、該当する各指標の「情報源」で具体的に参照している。上記以外の情報源は、マレーシアの合法性リスク評価には関係がないと判断した。

本評価書の起草期間中(2015年〜2017年)に、マレーシアで対面式の協議会を開催するなどして、国内の専門家と協議を行った。非政府組織、多数の関連政府省庁、事業者の代表など、幅広い分野の専門家の意見を求めた。機密保持の観点から、本報告書では、意見を求めた専門家の氏名を明記していないが、FSC国際本部(FSC International Center)の方針・基準課(PSU: Policy and Standards Unit)には全専門家のリストを提供している。

インターネットによる調査は、各指標について英語で行った。

参考文献

本評価では、情報源や適用される法律へのリンクを可能な限り掲載している。ただし、特に法律のリンクは頻繁に変更される可能性があるため、本報告書に記載されているリンクは、作成時には正しかったものの現在は有効ではない可能性がある。

● Australian Government Department of Agriculture and Water Resources (2017). Country specific guideline for Malaysia (Sabah) – Department of Agriculture and Water Resource and Ministry of Plantation Industries & Commodities. Available at: http://www.agriculture.gov.au/SiteCollectionDocuments/forestry/australias-forest-policies/illegal-logging/malaysia-sabah.pdf, accessed 8 February 2017.
● Australian Government Department of Agriculture and Water Resources (2017a). Country specific guideline for Malaysia (Sarawak) – Australian Government and the Government of Malaysia. Available at: http://www.agriculture.gov.au/SiteCollectionDocuments/forestry/australias-forest-policies/illegal-logging/malaysia-sarawak.pdf
● Australian Government Department of Agriculture and Water Resources (2017b). Country specific guideline for Malaysia (Peninsular),[pdf] Australian Government and the Government of Malaysia. Available at: http://www.agriculture.gov.au/SiteCollectionDocuments/forestry/australias-forest-policies/illegal-logging/malaysia-peninsula.pdf
● European Timber Trade Federation (2016). Timber Trade Portal – Malaysia. Accessed 6 April 2016 at http://www.timbertradeportal.com/countries/malaysia/.
● Malaysian Ministry of Natural Resources (2014). Official Portal Ministry of Natural Resources and Environment (NRE) “Negaraku, Alam Sekitarku” – Total Forested Areas in Malaysia (1990-2014). Accessed 6 April 2018 at http://www.nre.gov.my/en-my/Forestry/Pages/Statistics-Forest.aspx.
● Malaysian Ministry of Natural Resources (2014a). Official Portal Ministry of Natural Resources and Environment (NRE) “Negaraku, Alam Sekitarku” – Forest Types In Permanent Reserved Forest (1990-2014).Accessed 6 April 2018 at http://www.nre.gov.my/en-my/Forestry/Pages/Forest-Types-In-Permanent-Reserved-Forest.aspx
● Malaysian Ministry of Natural Resources (2014b). Official Portal Ministry of Natural Resources and Environment (NRE) “Negaraku, Alam Sekitarku” – Forestry facts.Accessed 6 April 2018 at http://www.nre.gov.my/en-my/Forestry/Pages/Forestry-fact.aspx.

D.合法性に関するリスク評価

伐採・木材収穫を行う法的権利

1.1 土地保有権および管理権慣習的権利および管理権を含む、土地保有権を対象とする法律。保有権や管理権を得るための法的な方法の利用に関する法律を含む。また、法的な事業登録や税務登録(法的に必要なライセンスを含む)も対象としている。土地の権利が現行の規則に従って発行されていない場合や、土地保有権や管理権の発行過程で汚職が行われている場合には、リスクが発生する可能性がある。この指標の目的は、すべての土地保有権および管理権が法律に従って発行されていることを確保することである。

1.1.1.適用される法令

● 森林条例(Forest Ordinance):http://www.sarawakforestry.com/pdf/laws/forests_ordinance_chapter_126.pdf
● 1962年森林規則(Forest Rules): http://www.sarawakforestry.com/pdf/laws/the_forest_rules.pdf
● 1958年サラワク土地法(Land Code)(第8章): http://faolex.fao.org/docs/pdf/mal134804.pdf
● 1992年先住民族裁判所条例(Native Court Ordinance)
● 1993年先住民族裁判所規則(Native Court Rules)

1.1.2.法的権限

● サラワク州森林局
● サラワク州土地調査局(Land and Survey Department)

1.1.3.法的に求められる文書または記録

● 森林木材ライセンス(Forest timber license)
● 法的または慣習的な保有権や使用権に関する民事裁判の判決
● 使用権を持つ地域コミュニティとの間で締結した土地の使用に関する契約合意書
● 先住民族裁判所の判決記録

1.1.4.情報源

政府以外の情報源

● Colchester, M., Pang, W. A., Chuo, W. M., & Jalong, T. 2007. Land is Life: Land Rights and Oil Palm Development in Sarawak. Forest Peoples Programme and Perkumpulan Sawit Watch.
● Environment News Service.2014.Sarawaks new chief minister takes on corrupt timber tycoons: http://ens-newswire.com/2014/11/18/sarawaks-new-chief-minister-takes-on-corrupt-timber-tycoons/
● Global Witness (2013). Inside Malaysia’s Shadow State. Available at https://www.globalwitness.org/campaigns/forests/inside-malaysias-shadow-state/.
● Lawson, S.2014.Consumer Goods and Deforestation: An Analysis of the Extent and Nature of Illegality in Forest Conversion for Agriculture and Timber Plantations. Forest Trends. Accessed 6 March 2015 at http://www.forest-trends.org/documents/files/doc_4718.pdf
● Lim, TW.2013.Malaysia:Illegalities in Forest Clearance for Large-Scale Commercial Plantations. Forest Trends. Accessed 24 February 2015 at http://www.forest-trends.org/publication_details.php?publicationID=4195
● Mongabay, (2017). Leading US plywood firm linked to alleged destruction, rights violations in Malaysia. Available at: https://news.mongabay.com/2017/10/leading-us-plywood-firm-linked-to-alleged-destruction-rights-violations-in-malaysia/.
● Ngidang, D.2005.Deconstruction and Reconstruction of Native Customary Land Tenure in Sarawak. Southeast Asian Studies, 47-75.
● Sarawak Report, 2016.Familiar Story Plays Out Against the Native Landowners of West Malaysia. Available at: http://www.sarawakreport.org/2016/09/familiar-story-plays-out-against-the-native-landowners-of-west-malaysia/.
● Sarawak Report.2015. Tufail Mahmud how I-evaded tax on my secret timber concession: http://www.sarawakreport.org/2015/02/timber-concessions-for-sabah-forestry-departments-special-staff-members/; http://www.sarawakreport.org/2015/01/tufail-mahmud-how-i-evaded-tax-on-my-secret-timber-concession/
● Suara Sarawak.2014: Sarawak gov’t suffers 10 defeats in NCR land cases: http://www.barubian.net/2014/04/sarawak-govt-suffers-10-defeats-in-ncr.html.
● Transparency International, (2017). Corruption Perception Index 2016. Available at: https://www.transparency.org/country/MYS. [ Accessed 5 February 2018].

1.1.5.リスク判定

法的要件の概要

サラワクの土地保有制度には、トレンスシステムによる公式な権利と、慣習法に由来する非公式な権利の両方が含まれる。その結果、「アダット(慣習)」、生活に必要な範囲の土地利用、および伝統的な農業制度に基づく制度と、商業的な大規模農業を可能にする制度が存在する(Ngidang, 2005)。

土地の所有権は、州から譲渡された私有地および州有地内の先住民族の慣習地については土地法に、続いて、保存林、保護林、コミュニティ林(Communal Forest)については1958年森林条例に法的に規定されている。1958年サラワク土地法に基づき、サラワク州には6つの土地分類が存在する。

● 混合地(Mixed Zone Land):海岸線に沿って位置する。民間所有の土地。土地市場で自由に売買され、マレーシア国民だけでなく外国人も所有することができる。
● 先住地(Native Land):海岸線近くに位置する。個人の権利化が奨励される土地市場は抑制されている。サラワクの先住民族(先住民族またはダヤック族)のみが保有できる。
● 先住民共有保留地(NCR: Native Communal Reserve):政府によって宣言され、慣習法によって規制されている。
● 先住慣習地(Native Customary Land):地域の慣習(アダット)によって支配されているが、先住民族の慣習的権利の法的解釈の対象となる。
● 内陸地(Interior Area Land):権利・使用がまだ定義されていない地域に指定されている。
● 保留地(Reserved Land):特別な目的のために官報に公示された土地(Colchester et al, 2007, pp.12-13)。

州から譲渡された私有地の登録番号はすべて、土地調査局(survey department)にて公開されている土地登記簿に記録されている。

永久保全林には先住民族の公式な権利は存在しない。かつての先住民族の慣習的権利はすべて補償されているはずである。

森林地域が官報に公示される前に、先住民族コミュニティの主張はすべて含まれ、考慮されることになっている。主張がない場合は、割り当てのプロセスが進められる。サラワク州では、先住民族の慣習的権利の対象となる州有地は、許可対象地域から除外される。ただし、先住民族の慣習的権利を有する土地保有者の事前の同意と、その後の森林局長の承認があれば、当該地域での木材伐採が可能である。先住民族の慣習的権利は登録されておらず、所有権も存在しない。

森林条例は、第4部で伝統的な使用を規定している。森林条例は、州がコミュニティからの要求に応じて、あらゆる州有地をコミュニティ林として構成することができるとしている。
リスクの内容

所有権の配分には、汚職や縁故主義のリスクがある。

● サラワクの土地の多くは何十年も前から民間の手に渡っている。州から譲渡された私有地とは、政府から民間の所有に移された土地である。汚職・縁故主義により企業が安く土地を手に入れているという報告があり(Sarawak Report, 2015)、これらの報告は前首相と関連している。2015年初頭にサラワク州の新州首相が就任し、森林セクターの汚職を取り締まる取り組みを開始した(Environmental News Service, 2014)。しかし、この取り組みが汚職を食い止めるのに成功しているかどうかは、まだ実証されていない。
● Lim(2013)は、「マレーシアでは、特に州政府による土地コンセッションの付与に関連して、いまだ非常に高レベルの腐敗が認識されている。数多くの研究によると、コンセッションの主な受益者は、州政府の幹部と関係のある政治家、その親戚、代理人、取り巻き、ビジネスマンである。サバ州とサラワク州の州首相については、プランテーションのための天然林の皆伐に関連してリベートや縁故採用など、広範囲にわたる汚職の疑惑が持ち上がっている」と述べている。

先住民族の慣習的権利の割り当てに関連して、土地保有権が不安定であるリスクがある。

● マレーシアのプランテーション開発では、過去20年間、森林地のリースの割り当てにおいて、先住民族の慣習的権利を侵害しているという申し立てが最も大きな問題となっている。連邦法や州法は、地域の人々が伝統的に依存してきた土地に対する権利を定めているが、影響を受けるコミュニティや非政府組織は、伐採やプランテーションのライセンス証発行において、この権利がほぼ例外なくなおざりにされていると主張している。先住民族の慣習的権利をめぐる紛争は、マレーシアのほぼすべての新規プランテーション事業で見られ、特にサラワクでは深刻な状況となっている(Lim, 2013)。
● 官報に公示される予定の地域について、コミュニティが主張する機会を提供することが義務付けられている。しかし、公示のプロセスは、コミュニティが読まないような目立たない通知によって公開され、そのためにコミュニティから主張がなされないことがある。そのため、森林地域の公示後も、林業事業者と地域コミュニティの間で保有権に関する紛争が発生している。
● 現在、多くの訴訟が法廷で争われている。2014年春には300件以上の先住民族の慣習的権利に関する土地訴訟が高等裁判所で係争中であった。2014年4月には10件の訴訟が先住民族に有利な形で決着した(Suara Sarawak, 2014)。
● サラワク州とその元首相で現知事のアブドゥル・タイブ・マフムド氏は、伐採やパーム油産業における腐敗度合いの高さで悪名高い(Global Witness, 2013)。
● 2016年、トランスペアレンシー・インターナショナルは、マレーシアの腐敗認識指数を100点満点中49点とした(0点から100点までの尺度で、100点が最も腐敗の度合いが低い)。評価対象となった167カ国のうち、マレーシアは55位であった。マレーシアは2015年に50点、2014年に52点であったが、今回は49点に成績を落としている。
● サラワク州は、おそらく汚職に関して最もメディアに注目されている州である(Global Witness, 2013; Transparency International, 2016)。マレーシアの汚職は、特に州政府による土地コンセッションの付与に関連して発生している(Lim, 2013)。
● サラワク州における土地保有の複雑な性質と腐敗度合いの高さから、先住民族の慣習的権利の侵害は長年にわたりマレーシアで最も顕著な問題のひとつとなっている。先住民族が認識している慣習権と、土地法に関して政府が解釈している「先住民族の慣習的権利」との間には明らかに大きな隔たりがあるため、土地紛争が多発し、その多くが裁判所に付託されている(Colchester et al., 2007)。
● Lim(2013)は、先住民族の慣習的権利の侵害に関して、サラワクだけでも200件以上の訴訟が係争中であると報告している(p.25)。係争中の訴訟が解決するよりも早いペースで、新しい訴訟が起こされている。200件のうち70件はプランテーション開発に関するもので、その大部分はアブラヤシに関するものであった(Lim, 2013)。現在の傾向として、原告側に有利な判決が下されることが多いが、中には10年以上前から続いている訴訟もあり、時間がかかるのも事実である。従って、土地保有に関するリスクは多岐にわたる。主な原因は、土地保有制度の複雑な性質、先住民族の慣習的権利の主張、サラワク土地法の改定、そして州首相とその家族を取り巻く悪名高い腐敗度合いの高さである。
● サラワク報告書は、「サラワクで何度も目にしてきたのは、腐敗した政治家や警察などの機関をバックに、武力で先住民族の土地への権利を奪うことだ」と述べている(Sarawak Report, 2016)。
● 2017年10月にアースサイト(Earthsight)が発表した報告書によると、2010年以降、シンヤン社(Shin Yang)をはじめとするサラワクで事業を展開する木材会社は、汚職や不正行為との関係が指摘されている。2013年には地域コミュニティが、シンヤン社が自分たちの地域で伐採を始める前に同意を得なかったとして裁判を起こしている(Mongabay 2017)。

問題は土地の公示の欠如であるため、この問題はすべての木材供給源に関係する。

歴史的に汚職の事例が多く、先住民族コミュニティとの保有権争いも多発していることから、すべての木材供給源にリスクが特定されたと考えられる。

リスクに関する結論

この指標は「特定リスク」と評価された。特定された法律は、すべての事業体によって一貫して支持されてはいない、またはしばしば無視されている、あるいは関連当局によって施行されていない。

1.1.6.リスクの指定と仕様

特定

1.1.7.対策および検証項目

● 土地登記簿上の所有権と不動産証書の有効性を確認する。
● 周辺住民や地域コミュニティなどとの協議を通じて、土地保有権が明確であることを確認する。
● 森林管理事業体(FME: forest management enterprise)の登録が、利害関係者との協議を経て、法的に定められたプロセスに従って認められていることを確認する。
● 事業の法的資格または設立された活動を行う権利が、事業停止を命じる裁判所命令などの法的に確立された決定の対象となっていないことを、利害関係者との協議を通じて確認する。

1.2.コンセッション・ライセンス

コンセッション・ライセンスを取得するための法的な方法の使用を含む、森林コンセッション・ライセンスの発行手続きを規定する法律。コンセッション・ライセンスに関連して、特に贈収賄、汚職、縁故主義の問題があることが、よく知られている。この指標の目的は、組織が贈収賄などの違法な手段でコンセッション・ライセンスを取得したり、権利を得る資格のない組織や団体が違法な手段でコンセッション・ライセンスを取得する状況に関連するリスクを回避することにある。この指標のリスクは、適正プロセス(デュープロセス)が踏まれておらず、したがってコンセッション権が違法に発行されていると考えられる状況に関するものである。国または準国家地域における汚職の度合いは重要な役割を果たすと考えられるため、リスクを評価する際には腐敗認識指標などの汚職指標を考慮する必要がある。

1.2.2.法的権限

● サラワク州森林局

1.2.3.法的に求められる文書または記録

● コンセッション許可証

1.2.4.情報源

政府以外の情報源

● Daily Express (2015). Sarawak Assembly approves Forests Bill, Available at: http://www.dailyexpress.com.my/news.cfm?NewsID=99207
● Global Witness (2013). Inside Malaysia’s Shadow State. Available at https://www.globalwitness.org/campaigns/forests/inside-malaysias-shadow-state/.
● Global Witness (2013). Inside Malaysia’s Shadow State. Available at https://www.globalwitness.org/campaigns/forests/inside-malaysias-shadow-state/.
● NEPCon expert consultation 2015-2017, personal communication.
● Report-Sarawak Timber Concession System. http://studentsrepo.um.edu.my/2370/6/BAB_3.pdf
● Sarawak Report, (2012). Malaysian Foreign Minister Named in MACC Investigation into Sabah Timber Corruption – NATIONAL EXPOSE. Available at: http://www.sarawakreport.org/2012/04/malaysian-foreign-minister-named-in-macc-investigation-into-sabah-timber-corruption-national-expose/
● Sarawak Report, (2015).Timber concessions for Sabah forestry departments special staff members? Available at: http://www.sarawakreport.org/2015/02/timber-concessions-for-sabah-forestry-departments-special-staff-members
● Sarawak Report, (2016). Familiar Story Plays Out Against the Native Landowners of West Malaysia. Available at: http://www.sarawakreport.org/2016/09/familiar-story-plays-out-against-the-native-landowners-of-west-malaysia/.
● Suara Sarawak, (2014): Sarawak gov’t suffers 10 defeats in NCR land cases. Available at http://www.barubian.net/2014/04/sarawak-govt-suffers-10-defeats-in-ncr.html.
● The Borneo Post, (2015). Forests Bill 2015 to better regulate state’s timber industry, Available at: http://www.theborneopost.com/2015/04/23/forests-bill-2015-to-better-regulate-states-timber-industry/
● The Star (2014). Adenan shows the way. Available online at https://www.thestar.com.my/opinion/columnists/along-the-watchtower/2014/11/19/adenan-shows-the-way/ accessed 6 April 2018.
● The Star Online, (2017). All timber concessions in Sarawak will need forest management certification. Available at: https://www.thestar.com.my/news/nation/2017/11/07/all-timber-concessions-in-sarawak-will-need-forest-management-certification/.

1.2.5.リスク判定

法的要件の概要

ライセンスは永久保全林(森林条例第49項)または州有地(同第50~51項)のみを対象として授与される。森林条例(第126章)51項および第51A項によると、計画・資源管理省(Ministry of Planning and Resource Management)は州有地における木材ライセンスの発行および撤回について絶対的な権限を持っているが、ライセンスは、大臣がより長いライセンス期間を明示的に認可した場合を除き、1年間しか有効ではない。

サラワク森林局の局長は、自身が適切と思う条件でライセンスを発行できる権限を持つ。

サラワク州首相による新しい指令が実施される予定である。この新指令によれば、コンセッション認可発行日から3年以内に国際的に認められた持続可能な森林管理(SFM)認証を取得した認可事業者・所有者に対して、サラワク州政府は長期の木材コンセッション(最長60年)を検討することになる。現在、木材コンセッションは永久保全林で5年から10年の期間で発行されている。すでに認証を取得している森林管理事業体1社が延長リースを獲得している(NEPCon expert consultation 2015, Personal Communication 3)。

リスクの内容

コンセッション・ライセンスが違法に発行されるリスクがある。また、コンセッションの割り当てプロセスには汚職のリスクがあることが広く報告されている。

● 前州首相の時代には、多くの汚職(身内びいき・縁故主義)と関係してコンセッション許可証が発行されていたとの報告がある。ただし、法廷では立証されていない(Sarawak Report 2012; Global Witness 2013)。
● 2014年初頭にサラワク州の新州首相が就任し、森林セクターの汚職を取り締まる取り組みを始めた。しかし、この取り組みが汚職を食い止めるのに成功しているかどうかは、まだ実証されていない。まだ施行されていない新しい森林法案では、「サラワクの永久林および州から譲渡された私有地からの林産物の採取は、森林局長が管理・規制するものとし、同局長が決定する形式および条件でライセンスを発行することができる」とされている。このように、ライセンス供与プロセスの透明性が保証されていないため、縁故主義や身内びいきが発生する恐れがある。
● 官報に公示される予定の地域に対してコミュニティが主張する機会を提供することが義務付けられている。しかし、公示のプロセスは、コミュニティが読まないような目立たない通知によって公開され、そのためにコミュニティから主張がなされないことがある。そのため、森林地域の公示後も、林業事業者と地域コミュニティの間で保有権に関する紛争が発生している。現在、多くの訴訟が法廷で争われている。2014年春には300件以上の先住民族の慣習的権利に関する土地訴訟が高等裁判所で係争中であった。2014年4月には10件の訴訟が先住民族に有利な形で決着した(Suara Sarawak, 2014)。
● サラワク・レポートは、「サラワクで何度も目にしてきたのは、腐敗した政治家や警察などの機関をバックに、武力で先住民族の土地への権利を奪うことだ」と述べている(Sarawak Report, 2016)。 これは、ライセンス供与のプロセスが法律に基づいて行われないリスクを示している。
● 2014年、サラワク州では、タン・スリ・アデナン・サテム氏が新しい州首相に就任した。アデナン州首相は就任後、同氏の州政府が新たな木材コンセッション・ライセンスを発行しないこと、アブラヤシプランテーションの拡大を認めないこと、木材セクターの汚職と「最後の丸太1本まで」闘うことを宣言した。アデナン州首相は、これらの公約に沿って、サラワクの最大手伐採企業らに対し、汚職に対抗する「誠実さの誓い」に署名するよう挑んだ(The Star 2014)。ストレーツ・タイムズ紙によると、こうした約束にもかかわらず、サラワク州シブ地域に所在する2万ヘクタールのコンセッション内で泥炭地を破壊したパーム油会社、ビントゥル・ランバー・デベロップメント社(BLD: Bintulu Lumber Development)を、州首相室は調査も起訴もしていない(Straits Times, 2016)。このコンセッションには、先住民族が権利を主張する土地も含まれている。
● サラワク州の「ビッグ6」と呼ばれる伐採企業6社(Samling、Shin Yang、Rimbunan Hijau、Ta Ann、WTK、KTS)は同州に残る熱帯林のほとんどを伐採するライセンスをすでに保有している。アデナン州首相は、この6社を違法伐採の取り締まりの対象から除外しないことを何度も約束している。
● 2015年、アデナン州首相は上記企業6社が2017年までに伐採事業の持続可能性認証を受けなければならないと発表した。2017年11月、副州首相は、クチンで開催された会議で、この約束を改めて表明し、サラワク州政府は州内のすべての木材コンセッションに森林管理認証の取得を義務付けると述べた。また、この義務化は、サラワク州の持続可能な森林管理を後押しするために段階的に実施されると述べた。しかし、時間枠については言及しなかった(the Star Online, 2017)。2017年の認証取得期限が守られなかった理由は、公開情報からは明らかではない。このように、サラワク州政府が、サラワク州でのコンセッションの割り当てに関連する問題を明確に認識し、すべてのコンセッションが認証を受けるよう要求していることは、この指標に関連するリスクを強く示唆している。政府が認証義務を守っていない(現時点で当初の期限は過ぎている)ことから、サラワクのコンセッション・ライセンスに関する長年の問題が完全には解決していないことがわかる。

歴史的に汚職事件が多発しており、先住民族との保有権争いも多いことから、永久保全林および州有地にはリスクが特定されたと考えられる。

コンセッション・ライセンスは永久保全林および州有地に対してのみ供与されるため、州から譲渡された私有地および農地はこの指標に該当しない。

リスクに関する結論

永久保全林と州有地に関して「特定リスク」。特定された法律は、すべての事業体によって一貫して支持されてはいない、またはしばしば無視されている、あるいは関連当局によって施行されていない。

州から譲渡された私有地および農地は該当しない。

1.2.6.リスクの指定と仕様

永久保全林と州有地に関して「特定リスク」。
州から譲渡された私有地および農地は該当しない。

1.2.7.対策および検証項目

● コンセッション内の慣習的権利について先住民族から深刻な申し立てがないこと(サラワク州高等裁判所で検証可能)。

第三者の権利

1.13 慣習的権利
利益の分配や先住民族の権利に関する要件を含む、木材伐採施業に関連する慣習的権利を対象とした法律。

1.13.1.適用される法令

● 森林条例:http://www.sarawakforestry.com/pdf/laws/forests_ordinance_chapter_126.pdf
● 1960年土地収用法(Land Acquisition Act):http://www.un.org/esa/socdev/unpfii/documents/DRIPS_en.pdf
● 1958年サラワク土地法(第8章):http://faolex.fao.org/docs/pdf/mal134804.pdf
● マレーシア連邦憲法(Malaysia Federal Constitution):http://www.agc.gov.my/agcportal/uploads/files/Publications/FC/Federal%20Consti%20(BI%20text).pdf
● 1965年国家土地法(National Land Code、法令第56号):http://www.kptg.gov.my/sites/default/files/article/NLC1956DIGITAL-VER1.pdf
● 1992年先住民族裁判所条例:http://lawnet.sarawak.gov.my/lawnet_file/Ordinance/ORD_CAP.%2022%20watermark.Pdf
● 1993年先住民族裁判所規則:http://www.nativecourt.sarawak.gov.my/modules/web/page.php?id=63&menu_id=113&sub_id=120
● サラワク森林条例(Cap.126):第二部(保存林)、第三部(保護林)、第四部(コミュニティ林)
● サラワク土地法(Cap.81)(助成金、リース、先住民族の慣習的権利、コミュニティ保留地):https://tiyungdayak.files.wordpress.com/2010/11/land-code-1958.pdf
● 1992年サラワク先住民族裁判所条例(Sarawak Native Court Ordinance)
● 1993年サラワク先住民族裁判所規則(Sarawak Native Court Rules)
● 先住民族の権利に関する国連宣言(UNDRIP: Declaration on the Rights of Indigenous Peoples):http://www.un.org/esa/socdev/unpfii/documents/DRIPS_en.pdf

1.13.2.法的権限

● サラワク州森林局
● サラワク林業公社

1.13.3.法的に求められる文書または記録

● 森林木材認可証
● 法的または慣習的な保有権や使用権に関する民事裁判の判決
● 使用権を持つ地域コミュニティとの間で締結した土地の使用に関する契約合意書

1.13.4.情報源

政府の情報源

● sarawakforestry.com (N.Y.) Sarawak Forestry Corporation (SFC). [online]. Available at: http://www.sarawakforestry.com/htm/sustainable.html
● forestry.sarawak.gov.my (N.Y.) Forest Department Sarawak (FDS). [online]. Available at: http://www.forestry.sarawak.gov.my/
政府以外の情報源
● Bulan, R.(2010).Indigenous Peoples and the Right to Participate in. International Expert Seminar on Indigenous Peoples and The Right to Participate in Decision Making. Chang Mai, Thailand.
● Colchester, M., Jalong, T., & Chuo, W. M.(2013).Sarawak: IOI-Pelita and the community of Long Teran Kanan. In M. Colchester, & S. Chao, Conflict or Consent? (pp. 232-258).FPP, Sawit Watch and TUK INDONESIA.
● Lawson, S.2014.Consumer Goods and Deforestation: An Analysis of the Extent and Nature of Illegality in Forest Conversion for Agriculture and Timber Plantations. Forest Trends. Accessed 6 March 2015 at http://www.forest-trends.org/documents/files/doc_4718.pdf.
● Lim, T. W.(2013).Malaysia: Illegalities in Forest Clearance for Large-Scale Commercial Plantations – report prepared for Forest Trends. Accessed 24 February 2015 at http://www.forest-trends.org/publication_details.php?publicationID=4195.
● Lucas, J.(2013, November 26).Forest people ‘disillusioned’ in battle to protect land. Retrieved from Thomson Reuters Foundation News: http://news.trust.org//item/20131126101312-463ag/
● Minority Rights Group International.(2016).Malaysia – Indigenous peoples and ethnic minorities in Sarawak. Retrieved from www.minorityrights.org: http://minorityrights.org/minorities/indigenous-peoples-and-ethnic-minorities-in-sarawak/
● NEPCon Expert consultation, (2015)
● Sarawak Gone, undated. Native Customary Rights. Available: http://www.sarawakgone.cc/issues/ncr/,  accessed 12 February 2018.
● Suara Sarawak 2014:Sarawak gov’t suffers 10 defeats in NCR land cases: http://www.barubian.net/2014/04/sarawak-govt-suffers-10-defeats-in-ncr.html
● Subramaniam, Y.(2015).Ethnicity, Indigeneity and Indigenous Rights: The ‘Orang Asli’ Experience. QUT Law Review, 71-91.

1.13.5.リスク判定

法的要件の概要

憲法第161A条の定義によると、サラワク州の先住民族とは、先住民族である両親の間に生まれた人のことである。最大の先住民族グループはイバン(Iban)である(サラワクの人口の31%)。その他のグループは、ビダユウ(Bidayuh)、ケニャ(Kenyah)、カヤン(Kayan)、ケダヤン(Kedayan)、ムルット(Murut)、プナン(Punan)、ビサヤ(Bisayah)、ケラビット(Kelabit)、ブラワン(Berawan)、プナン(Penan)である(Minority Rights Group International, 2016)。

サラワク州の法制度は、州の先住民族の慣習を憲法上支持し、保護している(Colchester, Jalong, & Chuo, 2013)。村長(tuai rumah or tua elocat)、地域長(penghulu)、最上級首長(pemancha and temongong)はサラワク州政府に認められているだけでなく、法の支配を維持する役割に対して報酬を受け取っている。憲法には、連邦政府が緊急時に法律を制定したり、統一を促進することを認める規定があるが、先住民族の意思決定プロセスは、先住民族の慣習に組み込まれているため、保護されている(Colchester, Jalong, & Chuo, 2013; Bulan, 2010)。

伐採ライセンス(FTL: forest timber license)文書の表2では、先住民族の慣習的権利の対象となる州有地は、ライセンス対象地域から除外される。ただし、先住民族の慣習的権利を有する土地保有者の事前の同意と、その後の森林局長の承認があれば、当該地域での木材伐採が可能である。保護林や州から譲渡された私有地は、先住民族の慣習的権利が抹消されているとみなされるため、これは適用されない。森林条例は、州はコミュニティからの要求に応じて、あらゆる州有地を共有林として構成することができるとしている。コミュニティは、この地域からいかなる林産物も自家用に採取することができる。コミュニティの土地を共有林として割り当てるには、コミュニティ自身が申請する必要があるが、コミュニティの知識が不足しているため、この申請が行われないことが多い。このため、コミュニティが土地を使用しているにもかかわらず、森林コンセッションとして割り当てられたり、農業用に転換されたりする可能性がある。埋葬地などの一部の文化的地域は、法律によって自動的に保護されている。

リスクの内容

土地の所有権は法的に明確に規定されているが、先住民族の慣習的権利に関する紛争が、林業事業者・州政府と地域コミュニティ・部族の間で発生している。地域の先住民族は林業事業者を封鎖し、同様に、先住民族は自分たちの慣習地から締め出されている。

「マレーシアのプランテーション開発では、過去20年間、森林地のリースの割り当てにおいて、先住民族の慣習的権利を侵害しているという申し立てが最も大きな問題となっている。連邦法や州法は、地域の人々が伝統的に依存してきた土地に対する権利を定めているが、影響を受けるコミュニティや非政府組織は、伐採やプランテーションのライセンス発行において、この権利がほぼ例外なくなおざりにされていると主張している。先住民族の慣習的権利をめぐる紛争は、マレーシアのほぼすべての新規プランテーション事業で見られ、特にサラワクでは深刻な状況となっている」(Forest Trends 2014, p. 52)。官報に公示される予定の地域について、コミュニティが主張する機会を提供することが義務付けられている。しかし、公示のプロセスは、コミュニティが読まないような目立たない通知によって公開され、そのためにコミュニティから主張がなされないことがある。そのため、森林地域の公示後も、林業事業者と地域コミュニティの間で保有権に関する紛争が発生している。現在、多くの訴訟が法廷で争われている。2014年春には300件以上の先住民族の慣習的権利に関する土地訴訟が高等裁判所で係争中であった。2014年4月には10件の訴訟が先住民族に有利な形で決着した(Suara Sarawak, 2014)。

伝統的な権利や先住民族の権利に関連する主なリスクは、先住民族の権利を適切に保護することができないと思われる法的枠組みと、この法的枠組みを組織的に利用して、慣習的な土地の権利よりも「公共目的の開発」を優先させてきた州政府や連邦政府である。

マレーシアは先住民族と部族民に関するILO条約第169号を批准しておらず、国内の法的枠組みは先住民族のすべての権利を適切に扱ってはいない。マレーシアの裁判制度に前向きな発展が見られるとはいえ、裁判に至る道は、膨大な時間と資源を必要とすることが多く、すべての先住民コミュニティにとって可能なことではない。マレーシアは、先住民族の権利に関する国際連合宣言(UNDRIP: The United Nations Declaration on the Rights of Indigenous Peoples)を採択しており、ある程度の国際基準を遵守している。Subramaniam(2015)が論じているように、先住民族の権利に関する国際連合宣言は法的強制力を持たないとはいえ、その採択は、道徳的・倫理的な期待をもたらす(p.72)。したがって、土地保有に関してサラワク州の先住民族の地位と扱いは、マレーシア国内の法的枠組みと直接対立するものではないかもしれないが、マレーシアの国際的な道徳的義務と矛盾している。

サラワク州の法制度は、州の先住民族の慣習を憲法上支持し、保護しているが、法律は先住民族の慣習的権利よりも民間の土地開発を促進するために、土地問題に関して争いの余地のない権力を州当局に与えてもいる。このため、サラワク州の先住民族は土地保有権が非常に不安定で苦しんでいることが明らかである。不安定さの原因は、主にサラワク州政府が先住民族の慣習的権利を狭義に解釈していることと、また、民間企業に大規模な土地コンセッションを渡していることである。サラワク州の土地政策は1958年サラワク土地法に準拠している。この法律は先住民族の慣習的権利が存在する土地の多くの側面を制限しており、元州首相で現知事のタイブ・モハマド氏が行った法改定は、民間投資と大規模プランテーションを積極的に推進するものであった(Colchester, Jalong, & Chuo, 2013)。サラワク土地統合復興機関(SALCRA: Sarawak Land Consolidation and Rehabilitation Authority)の設立、土地法第46項、1996年と1998年の同法改正により、民間の開発を促進するために先住民族の慣習的権利を抹消する絶対的な権限が州に与えられた(Colchester, Jalong, & Chuo, 2013; Bulan, 2010)。マレーシアやサラワク州はILO第169号条約を批准していないが、先住民族の権利に関する国際連合宣言は採択している。

先住民族や伝統的な人々の法的権利や慣習的権利が組織的に侵害されている証拠がある。サラワク州における土地保有の複雑な性質と腐敗度合いの高さから、先住民族の慣習的権利の侵害は長年にわたりマレーシアで最も顕著な問題のひとつとなっている。2013年、Lim(2013)は、先住民族の慣習的権利の侵害に関して、サラワクだけでも200件以上の訴訟が係争中であり、訴訟が解決するよりも早いペースで、新しい訴訟が起こされていると報告している(p.25)。200件のうち70件はプランテーション開発に関するもので、その大部分はアブラヤシに関するものであった(Lim, 2013)。いくつかのケースは注目に値するもので、おそらく最も有名なのはIOIペリタ(IOI-Perita)対ロング・テラン・カナン(Long Teran Kanan)であろう。1996年、RSPO加盟企業であるIOIペリタは、サラワク州北部のティンジャル(Tinjar)に所在する合弁事業に土地を供与されることになった。この地域は、ブラワン、カヤン、ケニャのコミュニティが慣習的権利を保有する土地と重なっていた(Colchester, Jalong, & Chuo, 2013)。裁判所は最初、先住民族のコミュニティを支持する判決を下したが、後に控訴された結果、この判決は覆され、15年以上にわたる長い法廷闘争の末、先住民族のコミュニティは土地を失うことになった(Lucas, 2013)。一般的に、サラワク州の先住民族グループと州政府・連邦政府との間の紛争は裁判所で解決されており、裁判所の決定は双方に尊重されているようだが、裁判は通常長引き、費用もかかるため、マレーシアの一部の先住民族グループにとって手の届かないものとなっている。
先住民族の慣習的権利に関する問題が多発していることから、リスクは特定されていると考えられる。

リスクに関する結論

「特定リスク」しきい値(2)を満たしている。特定された法律は、すべての事業体によって一貫して支持されてはいない、またはしばしば無視されている、あるいは関連当局によって施行されていない。

1.13.6.リスクの指定と仕様

特定リスク

1.13.7.対策および検証項目

● 林業事業者との協議記録が閲覧可能であり、地域の先住民族との面談が実施され、協議記録に照らして検証されるべきである。
● 主張されている慣習的権利を示す地図が閲覧可能であり、考慮され、また、権利が主張されている地域は木材伐採地域から除外される。
● 主張が真正であり、慣習的使用の証拠が存在するかどうかを検証する。

1.14.十分に情報を与えられた上での自由意思に基づく事前の合意(FPIC)
森林管理権や慣習的権利を伐採・木材伐採業務を担当する組織に移譲する際の「十分に情報を与えられた上での自由意思に基づく事前の合意(FPIC)」を対象とした法規制。

1.14.1.適用される法令

● サラワク森林条例(Cap.126):第二部(保存林)、第三部(保護林)、第四部(コミュニティ林):http://www.sarawakforestry.com/pdf/laws/forests_ordinance_chapter_126.pdf
● サラワク土地法(Cap.81)(助成金、リース、先住民族の慣習的権利、コミュニティ保留地):http://faolex.fao.org/docs/pdf/mal134804.p
● 1992年サラワク先住民族裁判所条例
● 1993年サラワク先住民族裁判所規則
● 1962年森林規則: http://www.sarawakforestry.com/pdf/laws/the_forest_rules.pdf

1.14.2.法的権限

● サラワク州森林局
● サラワク林業公社

1.14.3.法的に求められる文書または記録

● 森林木材認可証
● 法的または慣習的な保有権や使用権に関する民事裁判の判決
● 使用権を持つ地域コミュニティとの間で締結した土地の使用に関する契約合意書

1.14.4.情報源

政府の情報源

● sarawakforestry.com (N.Y.) Sarawak Forestry Corporation (SFC). [online].Available at: http://www.sarawakforestry.com/htm/sustainable.html
● forestry.sarawak.gov.my (N.Y.) Sarawak Forestry Department (SFD). [online].Available at: http://www.forestry.sarawak.gov.my/

政府以外の情報源

● Expert consultation conducted by NEPCon (2015)
● Global Witness (2013).Inside Malaysia’s Shadow State. Available at https://www.globalwitness.org/campaigns/forests/inside-malaysias-shadow-state/.
● Sarawak Gone (N.Y).Native Customary Rights. [Online]. Available at: http://www.sarawakgone.cc/issues/ncr/.

1.14.5.リスク判定

法的要件の概要

半島マレーシアとは異なり、サラワク土地法には、先住民族の慣習地への権利の規制に関してFPICに関連する具体的な規定がある。

伐採ライセンス文書の表2では、先住民族の慣習的権利の対象となる州有地は、ライセンス対象地域から除外される。ただし、先住民族の慣習的権利を有する土地保有者の事前の同意と、その後の森林局長の承認があれば、当該地域での伐採・木材伐採が可能である。

保護林や州から譲渡された私有地は、先住民族の慣習的権利が抹消されているとみなされるため、これは適用されない(Sarawak Land Code, Chapter 8)。

リスクの内容

土地の所有権は法的に明確に規定されているが、先住民族の慣習的権利に関する紛争が、林業事業者・州政府と地域コミュニティ・部族の間で発生している。(Sarawak Gone (N.Y))。地域の先住民族と林業事業者との間で紛争となっている土地において、適切な協議が行われることなく伐採・木材伐採が行われた事例が複数知られている。

FPICは、一般的に林業事業者にあまり理解されておらず、法的要件も特にその概念に言及していない。適切な協議は関係者全員の合意を必要とする。しかし、サラワク州で起きている多くの封鎖や、地域の先住民族が慣習地から追い出されていることを考えると、協議が不十分であることがわかる(Global Witness 2013)。

第三者によるFPIC違反のリスクがあるため、州有地にはリスクが特定されていると考えられる。

リスクに関する結論

州有地に関しては「特定リスク」。閾値(2)を満たしている。特定された法律は、すべての事業体によって一貫して支持されてはいない、またはしばしば無視されている、あるいは関連当局によって施行されていない。

永久保全林および州から譲渡された私有地は該当しない。

1.14.6.リスクの指定と仕様

州有地に関しては「特定リスク」。
永久保全林および州から譲渡された私有地は該当しない。

1.14.7.対策および検証項目

● 先住民族の慣習的権利が存在するすべての土地において、利害関係者との間で事前に十分な情報を与えられた上での同意がなされている場合、FPICの記録を確認すること。
● すべての利害関係者にインタビューを行い、経営陣と該当するすべての利害関係者の間で合意されていることを確認すること。

1.15 先住民族・伝統的な人々の権利
林業活動に関連して、先住民族や伝統的な人々の権利を規制する法律。考慮すべき点は、土地保有権、特定の森林関連資源を使用する権利、あるいは林地に関わる可能性がある伝統的活動を行う権利である。

1.15.1.適用される法令

● 森林条例: http://www.sarawakforestry.com/pdf/laws/forests_ordinance_chapter_126.pdf
● 1960年土地収用法: http://www.kptg.gov.my/sites/default/files/article/Act%20486-PENGAMBILAN.pdf
● 1958年サラワク土地法(第8章): http://faolex.fao.org/docs/pdf/mal134804.pdf
● マレーシア連邦憲法: http://www.agc.gov.my/agcportal/uploads/files/Publications/FC/Federal%20Consti%20(BI%20text).pdf
● 1965年国家土地法(法令第56号): http://www.kptg.gov.my/sites/default/files/article/NLC1956DIGITAL-VER1.pdf
● 1992年先住民族裁判所条例:http://lawnet.sarawak.gov.my/lawnet_file/Ordinance/ORD_CAP.%2022%20watermark.pdf
● 1993年先住民族裁判所規則:http://www.nativecourt.sarawak.gov.my/modules/web/page.php?id=63&menu_id=113&sub_id=120
● サラワク森林条例(Cap.126):第二部(保存林)、第三部(保護林)、第四部(コミュニティ林)
● サラワク土地法(Cap.81)(助成金、リース、先住民族の慣習的権利、コミュニティ保留地):https://tiyungdayak.files.wordpress.com/2010/11/land-code-1958.pdf
● 1992年サラワク先住民族裁判所条例
● 1993年サラワク先住民族裁判所規則
● 先住民族の権利に関する国連宣言:http://www.un.org/esa/socdev/unpfii/documents/DRIPS_en.pdf

1.15.2.法的権限

● サラワク州森林局
● サラワク林業公社

1.15.3.法的に求められる文書または記録

● 森林木材認可証
● 法的または慣習的な保有権や使用権に関する民事裁判の判決
● 使用権を持つ地域コミュニティとの間で締結した土地の使用に関する契約合意書

1.15.4.情報源

政府の情報源

● sarawakforestry.com (N.Y.) Sarawak Forestry Corporation (SFC). [online].Available at: http://www.sarawakforestry.com/htm/sustainable.html 
● forestry.sarawak.gov.my (N.Y.) Sarawak Forestry Department (SFD). [online].Available at: http://www.forestry.sarawak.gov.my/

政府以外の情報源

● Bulan, R.(2010).Indigenous Peoples and the Right to Participate in. International Expert Seminar on Indigenous Peoples and The Right to Participate in Decision Making. Chang Mai, Thailand.
● Colchester, M., Jalong, T., & Chuo, W. M.(2013).Sarawak: IOI-Pelita and the community of Long Teran Kanan. In M. Colchester, & S. Chao, Conflict or Consent? (pp. 232-258).FPP, Sawit Watch and TUK INDONESIA.
● Expert consultation conducted by NEPCon (2015)
● Lawson, S.(2014).Consumer Goods and Deforestation: An Analysis of the Extent and Nature of Illegality in Forest Conversion for Agriculture and Timber Plantations. Forest Trends. Accessed 6 March 2015 at http://www.forest-trends.org/documents/files/doc_4718.pdf.
● Lim, T. W.(2013).Malaysia: Illegalities in Forest Clearance for Large-Scale Commercial Plantations – report prepared for Forest Trends. Accessed 24 February 2015 at http://www.forest-trends.org/publication_details.php?publicationID=4195.
● Lucas, J.(2013, November 26).Forest people ‘disillusioned’ in battle to protect land. Retrieved from Thomson Reuters Foundation News: http://news.trust.org//item/20131126101312-463ag/
● Minority Rights Group International.(2016).Malaysia – Indigenous peoples and ethnic minorities in Sarawak. Retrieved from www.minorityrights.org: http://minorityrights.org/minorities/indigenous-peoples-and-ethnic-minorities-in-sarawak/
● Sarawak Gone, undated. Native Customary Rights. Available: http://www.sarawakgone.cc/issues/ncr/, accessed 12 February 2018.
● Suara Sarawak (2014) Sarawak gov’t suffers 10 defeats in NCR land cases: http://www.barubian.net/2014/04/sarawak-govt-suffers-10-defeats-in-ncr.html
● Subramaniam, Y.(2015).Ethnicity, Indigeneity and Indigenous Rights: The ‘Orang Asli’ Experience. QUT Law Review, 71-91.

1.15.5.リスク判定

法的要件の概要

憲法第161A条の定義によると、サラワク州の先住民族とは、先住民族である両親の間に生まれた人のことである。最大の先住民グループはイバン(Iban)である(サラワクの人口の31%)。その他のグループは、ビダユ、ケニャ族、カヤン、ケダヤン(Kedayan)、ムルット、プナン(Punan)、ビサヤ族、ケラビット族、ベラワン族、ペナン(Penan)である(Minority Rights Group International, 2016)。

サラワク州の法制度は、州の先住民族の慣習を憲法上支持し、保護している(Colchester, Jalong, & Chuo, 2013)。村長、地域長、最上級首長はサラワク州政府に認められているだけでなく、法の支配を維持する役割に対して報酬を受け取っている。憲法には、連邦政府が緊急時に法律を制定したり、統一を促進することを認める規定があるが、先住民族の意思決定プロセスは、先住民族の慣習に組み込まれているため、保護されている(Colchester, Jalong, & Chuo, 2013; Bulan, 2010)。

伐採許可文書の表2では、先住民族の慣習的権利の対象となる州有地は、許可対象地域から除外される。ただし、先住民族の慣習的権利を有する土地保有者の事前の同意と、その後の森林局長の承認があれば、当該地域での伐採・木材収穫が可能である。保護林や州から譲渡された私有地は、先住民族の慣習的権利が抹消されているとみなされるため、これは適用されない森林条例は、州はコミュニティからの要求に応じて、あらゆる州有地をコミュニティ林として構成することができるとしている。コミュニティは、この地域からいかなる林産物も自家用に採取することができる。コミュニティのの土地をコミュニティの森として割り当てるには、コミュニティ自身が申請する必要がある。コミュニティの知識が不足しているため、この申請が行われないことが多い。このため、コミュニティが土地を使用しているにもかかわらず、森林コンセッションとして割り当てられたり、農業用に転換されたりする可能性がある。埋葬地などの一部の文化的地域は、法律によって自動的に保護されている。

リスクの内容

土地の所有権は法的に明確に規定されているが、先住民族の慣習的権利に関する紛争が、林業事業者・州政府と地域コミュニティ・部族の間で発生している。地域の先住民族は林業事業者を封鎖し、同様に、先住民族は自分たちの慣習地から締め出されている。

「マレーシアのプランテーション開発では、過去20年間、森林地のリースの割り当てにおいて、先住民族の慣習的権利を侵害しているという申し立てが最も大きな問題となっている。連邦法や州法は、地域の人々が伝統的に依存してきた土地に対する権利を定めているが、影響を受けるコミュニティや非政府組織は、伐採やプランテーションの許可証発行において、この権利がほぼ例外なくなおざりにされていると主張している。先住民族の慣習的権利をめぐる紛争は、マレーシアのほぼすべての新規プランテーション事業で見られ、特にサラワクでは深刻な状況となっている」(Forest Trends 2014, p. 52)。官報に公示される予定の地域について、コミュニティが主張する機会を提供することが義務付けられている。しかし、公示のプロセスは、コミュニティが読まないような目立たない通知によって公開され、そのためにコミュニティから主張がなされないことがある。そのため、森林地域の公示後も、林業事業者と地域コミュニティの間で保有権に関する紛争が発生している。現在、多くの訴訟が法廷で争われている。2014年春には300件以上の先住民族の慣習的権利に関する土地訴訟が高等裁判所で係争中であった。2014年4月には10件の訴訟が先住民族に有利な形で決着した(Suara Sarawak, 2014)。

先住民族の慣習的権利に関する問題の数が多いことから、リスクは特定されていると考えられる。

リスクに関する結論

「特定リスク」しきい値(2)を満たしている。特定された法律は、すべての事業体によって一貫して支持されてはいない、またはしばしば無視されている、あるいは関連当局によって施行されていない。

1.15.6.リスクの指定と仕様

特定リスク

1.15.7.対策および検証項目

● 林業事業者との協議記録が閲覧可能であり、地域の先住民族との面談が実施され、協議記録に照らして検証されるべきである。
● 主張されている慣習的権利を示す地図が閲覧可能であり、考慮され、また、権利が主張されている地域は木材収穫地域から除外される。
● 主張が真正であり、慣習的使用の証拠が存在するかどうかを検証する。

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