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緊急プレスリリース:東京五輪会場建設に熱帯材使用(2018/2/16)

東京五輪競技会場の建設に高リスクの熱帯材大量使用、国内外NGOから「遺憾」の声
〜新たに公開された情報により、主要な五輪施設建設での無責任な木材調達の環境・社会的影響への深刻な懸念に裏付け〜

ブルーノマンサー基金
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
マーケット・フォー・チェンジ
熱帯林行動ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan

国内外のNGO5団体は本日16日、東京2020組織委員会が新国立競技場などの建設における熱帯材の調達状況を公開(注1)したことを受けて、環境・社会面のリスクの高い熱帯材が大量に調達されていることに遺憾の意を表しました。これはNGO44団体が2016年12月に公開を請求した調達木材に関する情報について1年以上経って、継続的な要請にようやく応える形で公表されました。平昌冬季オリンピックが世界の注目を集める中、東京大会の木材調達の持続可能性に関する以前からの懸念が、この開示によって裏付けられました。

サラワク材

写真:オリンピックアクアティクスセンター建設現場で使われているマレーシア・サラワク州産合板(2017年11月20日撮影)

マーケット・フォー・チェンジ(豪)のペグ・パットは「新たに公開された情報を見て、これまで使われてきた熱帯材の膨大な量に驚き、調達木材の持続可能性と合法性を確保する手続きが明らかに欠けていることを遺憾に思います。東京2020組織委員会が、オリンピック競技会場施建設に使用される熱帯材合板について情報を公開したことは歓迎しますが、同時に、東京大会の無責任な木材調達が環境・社会的影響をもたらす恐れがあるという深刻な懸念が裏付けられました」と訴えました。公開された情報によると、2017年11月末時点で、新国立競技場建設のために使用されたコンクリート型枠合板の87%以上がマレーシアおよびインドネシアの熱帯林に由来しています。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク(米国)のハナ・ハイネケンは「使用されている木材の大半はインドネシアの熱帯林から切り出された非認証の合板です。インドネシアの熱帯林は森林伐採が急激に進む地域の一つで、生物多様性が脅かされている中心地です」と批判しました。

新国立競技場で使われる木材の約3%がマレーシアからの認証合板ですが、その持続可能性については非常に疑問視されています。NGOの調査(注2)では、マレーシアの伐採企業シンヤン社が供給したマレーシア産合板が、新国立競技場の建設現場で使われていることがわかっています。シンヤン社はボルネオの生物多様性のホットスポット破壊や先住民族の権利の侵害に関与し、以前には違法伐採にも関与したことで評判が悪い企業です。また東京2020組織委員会の発表は、オリンピックアクアティクスセンター、有明アリーナ、海の森水上競技場など他の施設でも同様に、マレーシアやインドネシアの熱帯材が調達されていると記載しています。

熱帯林の保護は、気候変動の抑制、生物多様性の保全、数百万人にも及ぶ先住民族や地元コミュニティの生活環境をささえるために非常に重要であるにもかかわらず、日本は依然として世界最大の熱帯材合板の消費国であり、インドネシアとマレーシアから2016年だけで約200万㎥の合板を輸入しています。ハイネケンは「2020年東京大会の施設建設のために、持続可能ではない熱帯材合板が使われることは、オリンピックの持続可能性への誓約を弱体化させます。オリンピック大会当局は、建設業界とその評判の悪い「従来通りのやり方(ビジネス・アズ・ユージュアル)」を優先し、持続可能性を犠牲にしようとしています」と懸念を述べました。

世界の森林減少は2016年に過去最高水準を記録しました。森林火災、農地開発、木材の伐採、鉱山開発を大きな原因として、2,970万ヘクタールの森林面積(ニュージーランドの総面積に相当)が失われました。インドネシアとマレーシアは2016年の森林減少面積の上位10カ国に入っており、その多くはパーム油やパルプ材の商業プランテーション開発が関係しています。急激な森林伐採は2017年も続いています。パットは「インドネシアとマレーシアからの木材製品の調達が高リスクであると考えると、東京大会当局が公表した情報では、大会関連工事で使用される木材が合法的かつ持続可能な方法で伐採されていることの有意な保証にはなりません。むしろ無責任な調達が大量に行われていることを露呈しています」と述べています。

FoE Japanの三柴淳一は「東京2020組織委員会の『持続可能性に配慮した木材の調達基準』の『持続可能性』は名ばかりで、その調達基準には反映されていません。熱帯林を破壊している企業からの合板の調達を禁止し、それらの企業が法制度や認証制度の不備につけ込むのをやめさせるために調達基準を強化しなければなりません。東京2020組織委員会は、透明性と説明責任を改善して強固なデュー・デリジェンスを確立し、持続可能な日本産の木材を積極的に使用するまで、信頼を得られないでしょう」と訴えました。

※詳細はブリーフィングペーパー「2020年東京五輪の熱帯材使用に関する公式な情報開示に対するNGOの解説」(2018年2月16日発行)をご参照ください。

注1)「『持続可能性に配慮した木材の調達基準』の実施状況に関するフォローアップについて:コンクリート型枠合板の調達状況について」(公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、2018年2月5日)(註:組織委員会解散のため現在は閲覧できません)

注2)ブリーフィングペーパー「2020年東京五輪の熱帯材使用に関する公式な情報開示に対するNGOの解説」より

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