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土地紛争の早期解決を求める要望書(公開書簡):MHP社によるチャワン・グミリール集落の強制排除

2016年09月30日掲載

丸紅が100%権益を保有し、インドネシア・南スマトラ州で植林事業を展開しているムシ・フタン・プルサダ(Musi Hutan Persada:MHP)社は、2015年7月と2016年3月の二回にわたって、チャワン・グミリール集落(Dusun Cawang Gumilir)(同州ムシ・ラワス県ブミ・マクムル村の下位行政単位)に対して住民の持つゴム園、キャッサバ畑の農地とおよそ200世帯、900名が暮らす住居、および小学校、太陽光発電施設などを根こそぎ破壊する強制排除を行った。

JATANではこの強制排除に抗議して、国際環境NGOFoE Japan、インドネシア民主化支援ネットワーク(NINDJA)との連署による「土地紛争の早期解決を求める要望書」を2016年9月30日に送付した。

平成28 年9 月30 日

丸紅株式会社
代表取締役社長 國分文也 殿

土地紛争の早期解決を求める要望書(公開書簡)

私たちは、御社が2005 年に本格的に経営に参入し、2015 年3 月に完全子会社化した、インドネ
シアのムシ・フタン・ペルサダ社(以下、MHP 社)の事業地内で行われたチャワン・グミリール集落等
住民の強制排除に強く憂慮する日本の市民です。
南スマトラ州における環境と人権に関する問題に詳しいNGO、南スマトラ環境フォーラム(WALHI
Sumatra Selatan)によると、御社がMHP 社の株を100 パーセント取得して間もない2015 年7 月7
日、MHP社は、治安部隊(国軍および警察)の警護の下、重機を用いて、ゴム園やキャッサバ畑など
チャワン・グミリール住民の農地を破壊しましたi。その直後、南スマトラ環境フォーラムのスタッフや
環境林業省から派遣された職員が、破壊行為を停止して土地紛争解決に向けた話し合いを行うよう、
MPH 社および県林業局に提案しましたが、聞き入れられず、農地の破壊は7 月17 日頃まで続きま
したii。
この間、環境林業省・持続的生産林管理総局長は、2015 年7 月10 日付の文書で、MHP 社代表
取締役に対して、紛争解決にむけて抑圧的な手段を取らないことなどを求めています。また、環境林
業大臣も、同年7 月14 日付の文書で、南スマトラ州知事およびムシ・ラワス県知事に対して、MPH
社によるチャワン・グミリール集落の強制排除を止めさせ、対話にむけた努力を払うよう求めていま
す。
しかし、MHP 社と住民との間の十分な話し合いが行われることはなく、2016 年3 月17 日、再び
チャワン・グミリール住民の農地への破壊活動が始まり、住民たちの家屋には、「2016 年保全林地
域返還統合チーム」によって「集落の建物の取り壊しを遅くとも3 月28 日に実施する」ことを通知す
る張り紙が張られました。住民のゴム園、キャッサバや陸稲の植えられた畑などの破壊が続くととも
に、3 月30 日までに、イスラーム礼拝所を除き、集落の全民家、小学校、太陽光発電施設などが完
全に破壊されました。この強制排除により、約200 世帯の人びとが、住む場所と生計手段を完全に
奪われましたiii。今回の事件を受け、南スマトラ環境フォーラムなどの団体は、農民たちに土地を返
すとともに、破壊された家屋や集落の施設の修復を求める声明を発表していますiv。
私たちのうちの数名が現地を訪問した2016年8月中旬、チャワン・グミリール住民約70世帯は、
ブミ・マクムル村の一集落に破壊された家屋の廃材を用いて建設した小屋で避難生活を送っていま
した。残りの世帯は、周辺の集落の住民宅に居候をしていました。彼らは、日雇い農業労働者など
をしながら、また、近隣住民からのわずかな食糧支援を受けながら、困難な避難生活を送っていまし
た。チャワン・グミリール集落にあった小学校に通っていた約50 名の生徒のなかには、避難生活を
送るようになってから、全く学校に通えていない子供たちもいるとのことでした。
私たちは、このような事態に対して非常に強い憂慮の念を抱いています。チャワン・グミリール住
民は、MHP 社が事業許可を取得した1996 年よりも後に入植した人びとではありますが、彼らは、数
年間にわたる大変な労働の成果としてすでにそこに暮らしの基盤を築いており、また、県政府からも
正式な行政単位として認知された集落の構成員でもあります(住民の一部は、チャワン・グミリール
集落の住民であることを示す、ムシ・ラワス県の人口・市民登録局が発行した住民票と身分証明書
を所持しています)v。
そうした人びとに対して、MHP 社は環境林業省が求めた紛争解決のための十分な対話を行うこと
なく、暮らしの基盤を根こそぎ奪ってしまいました。このことは、倫理的な観点から、また、「植林用地
は地域住民の生活(中略)に配慮した方法で確保」viすることを謳っている御社の経営理念との整合
性という観点から、決して正当化し得ないものです。
以上を踏まえて、私たちは以下の点を要望いたします。
(1) 紛争解決プロセスの長期化による住民の被害拡大を防止すべく、早急に住民とMHP 社との対
話の場を設けてください。
強制排除から間もない2016年4月7日、環境林業省社会林業・環境連携総局長が議長とな
り、住民、MHP 社、州および県林業局、NGO などの参加の下、ルブックリンガウで土地紛争解
決のための会合が開かれました。その場で、住民たちは、MHP 社をはじめとする関係機関と土
地紛争解決のための対話を進めていくことを求めました。しかし、その後、MHP 社と住民との話
し合いは実現していません。解決のプロセスの長期化は、彼らの「被害」を拡大させる恐れがあ
ります。早急に、話し合いを持つよう、MHP 社に働きかけていただくよう要望します。
(2) 紛争解決に至るまでの間、住民の「基本的ニーズ」を保証・支援してください。
2016年3月以降、農地と住む場所を失った住民たちは、大変困難な避難生活を強いられてい
ます。住民たちにとって納得のゆく紛争解決策が合意に至るまで、食糧やその他の基本的な
ニーズを満たすための物資を住民たちに提供するよう要望します。
(3) 今後の取り組みについて文書でご回答ください。
上記の(1)と(2)の点について、今後この問題にどのように対応される予定かを文書でご回答
願います。また、チャワン・グミリール集落に限らず、MHP 社は事業地内に居住する住民との土
地紛争を数多く抱えています。今後、紛争解決に向けて、MHP 社はどのような取り組みを進め
ていくべきだとお考えか、また、そのために親会社としてどのような働きかけをMHP 社に行う予
定かについても文書でご回答いただくよう要望いたします。なお、10月7日(金)までにご回答い
ただけますよう、重ねて要望いたします。
紙・パルプビジネスでトップを走り続けてきた御社の影響力は計り知れません。御社が果たすべき
社会的な責任は大きく、責任あるご対応を切に願います。

以上

【注釈】
i) チャワン・グミリール集落は、2000 年代半ば以降に、MHP 社の事業地内に、産業造林型移住事業により移住して
きた人たちの子孫を含む近隣住民やその他の地域からの移住者が開墾することで徐々に形成された村で、2013 年
に南スマトラ州ムシ・ラワス県ブミ・マクムル村の下位行政組織として当時の県政府から正式に認められた集落でし
た(ブミ・マクムル村元村長S 氏へのインタビュー(2016 年8 月16 日))。
ii) 南スマトラ環境フォーラムのプレスリリース(Siaran Pers : Mengutuk Tindak Kekerasan dan pengusuran lahanyang dilakukan PT. Musi Hutan Persada (Marubeni Coorporation) bersama aparat Kepolisian, TNI danPOLHUT)、同フォー
ラム代表H氏へのインタビュー(2016年8月11日)、及び、チャワン・グミリール集落の複数の住民へのインタビュー
(2016 年8 月12~13 日)による。
iii) 南スマトラ環境フォーラム代表H 氏へのインタビュー(2016 年8 月11 日)、及び、チャワン・グミリール集落の複
数の住民へのインタビュー(2016 年8 月12~13 日)による。
iv) Koalisi Masyarakat Sipil Sumsel. 2016. Pernyataan Sikap Bersama : Mengutuk Pengusuran pemukiman danlahan Dusun cawang Gumilir yang di lakukan PT. MUsi Hutan Persada (Marubeni)
v) チャワン・グミリール集落の複数の住民へのインタビュー(2016 年8 月12~13 日)による。
vi) 丸紅. 2010.「Marubeni CSR Report 2010」

国際環境NGO FoE Japan
熱帯林行動ネットワーク(JATAN)
インドネシア民主化支援ネットワーク(NINDJA)

「土地紛争の早期解決を求める要望書」(PDF)

隣接の村に避難している住民たち

隣接の村に避難している住民たち(撮影:笹岡正俊氏)

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「保全価値の高い森林HCVF」

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MHPのHTIコンセッション296400-ha

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テントで暮らす避難民の親子(撮影:笹岡正俊氏)

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家屋の残骸

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小学校の破壊跡地

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ブロックされた集落に通じる道路(撮影:笹岡正俊氏)

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残された太陽光発電施設の基礎部分

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