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インドネシア:「村落林」のさらなる拡大に向けて ― JATAN主催のマルチ・ステークホルダー・ワークショップ報告

JATANでは2010~2012年の3年間、インドネシアのスマトラ島リアウ州で、地域住民の森林に対する権利の確保に向けた「村落林(Hutan Desa)」登録のための支援を行ってきました。現在のインドネシアの法では、森林に対する地域住民の慣習的な権利は保証されておらず、企業の開発地域と重複してしまうといった問題がこのプロジェクト実施に至った背景にあります。「村落林」として承認を受けることができれば、期限付きではありますが森林の利用権を得ることができます。多くの森林が開発の対象となっている場所においては、地域住民の森林に対する土地の権利を守るための手段として有効であると考えられます。

「村落林」は、民主化の動きが高まりはじめた90年代後半に、これまでのような中央集権的な森林管理ではなく、住民が森林管理に参加できるようにする仕組みとして1999年の森林法で明記されました。しかし、その時はまだ具体的な中身に関しては規定されておらず、実質的に運用が始まったのはそれから約10年後の2008年からでした。インドネシア林業省も、2014年までに「村落林」として登録された森林、つまり住民たちが主体となって管理する森林、を50万ヘクタールまでに増やすという目標を掲げていますが、2013年1月時点でおよそ1万5千ヘクタールが承認されているに過ぎない状況です。

リアウ州の現地では、JATANの現地カウンターパートであるミトラインサニ財団(Yayasan Mitra Insani)がリアウ州沿岸部のいくつかの村で、村落林の登録に向けた支援を行っています。そのうちの一つであるセガマイ(Segamai)村とセラプン(Serapung)村では、2010年から支援が行われてきましたが、2013年4月にようやく正式に「村落林」として承認されました。リアウ州では初となる「村落林」が誕生したわけですが、土地紛争が数多く報告されているこの州で承認されたことは大きな意味を持つことになります。

リアウ州で初の村落林が登録されてすぐの4月27日、州都プカンバルで村落林スキームをさらに促進するためのワークショップが開催されました。このワークショップでは、州内の政府関係者、NGO、地域住民、研究者、民間企業が参加し、住民参加型の森林管理を促進していく上での地方政府の役割や、NGOの経験から得られた課題点などについて議論がされました。

さらにそれから一か月後の5月24~25日、首都ジャカルタでも、「村落林」を含むより広いテーマで住民参加型の森林管理(CBFM)を推進するためのワークショップが開催されました。これにはインドネシア中のコミュニティ代表をはじめ、林業省幹部、地方政府関係者、NGOなど120名を超える参加者が一堂に集まりました。

主に住民参加型の森林管理を進めていく上での課題、これまでの成功事例の取り組みの紹介について活発な議論が行われました。2日目は一段と会場の議論はヒートアップを帯びてきます。コミュニティの代表たちとの直接対話に強い意欲を示していたという林業大臣も参加する予定でしたが、住民側の期待と不満の大きさに気圧されたか、結局姿を現すことはありませんでした。CBFMに対する政府側の姿勢を露呈させたという意味でも、「村落林」の制度論議にとって重要な一石を投じることができたものと考えています。


姿を現さない林業大臣にバナーを掲げて怒りを露にする参加者

※このワークショップは、公益財団法人トヨタ財団からの支援を受けて実現しました。

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