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APP社、世界有数の大型小売業から相相次ぐ絶縁状

小売業界で世界トップクラスの企業が最近、相次いでAsia Pulp & Paper (APP)との製品調達契約を破棄している。ここでは、米国のステイプルズ社と豪州のウールワースの例を取り上げる。

◆ステイプルズ社(Staples, Inc.)

オフィス・マックス、オフィス・デポといった巨大企業がひしめく米国のオフィス用品販売産業。この業界にあってトップに君臨するステイプルズが、2008年2月、オフィス・デポに続いて、APPとの契約に終止符を打った。

ステイプルズ社(本社・マサチューセッツ州フラミンガム)は、北米に1,832店舗を構え、世界27カ国にわたってビジネス展開する世界最大のオフィス用品販売チェーン。Eコマース(インターネット販売)の売上でもアマゾン(Amazon.com)に次いで二番目の規模を誇っている。同社はAPPを相手に過去11年間、顧客関係を続けてきた。コピー用紙を中心に同社チェーンストアーで扱う紙製品のおよそ5%をAPPから購入し、同社ブランド商品として販売してきた。こうした調達実績をめぐっては2000年にフォレスト・エシックス(Forest Ethics)など米国のNGO団体からキャンペーンの標的とされてきた。以来ステイプルズ社は、APPに対して納品の紙製品については古紙配合率を高めるよう要求してきたというが、環境保護に向けた取り組みについて、なんら積極的な姿勢が見られなかったとして2008年2月、ついに契約を破棄した。ステイプルズ社の環境部門の担当者、マーク・バックリーは言う ― APPの顧客である続けることは、ステイプルズ社のブランドを「多大な危険にさらす」ことになった、と。

ステイプルズ社の自社ブランド、100%FSC認証古紙によるコピー用紙

現在ステイプルズが掲げる、コピー用紙の原料調達基準は非常に明快だ。その標準仕様はFSC(森林管理協議会)認証のリサイクル紙。APPとの契約破棄後の昨年3月に発表した声明によれば、同社直営のコピー&プリント・センター、全1,400店舗で使用されているコピー用紙は古紙配合率50%以上のFSC認証古紙だという。2010年までにコピー&プリント・センター以外でも同社が販売するすべてのコピー用紙についてFSC認証紙のラインアップを大幅に増やす目標を掲げている。

◆ウールワース (Woolworths Limited)

豪州最大の小売業者、ウールワースは2008年8月、「世界で最悪の木材加工企業」、APPとの契約を破棄することを表明した。ステイプルズ社とだいぶ事情が異なるが、破棄を決めた背景には、労働組合による反APPの不買運動があった。

 

建設業、林業、鉱山業、エネルギー関連産業組合(Construction Forestry Mining Energy Union, CFMEU)の製紙業部門を母体とする、「目を覚ませ、ウールワース(“Wake Up Woolworths”)」という一連のキャンペーン活動は組合員を動員して、同社に対する精力的な圧力運動を展開。メディア戦略も奏功して、同社から契約破棄の言明を導くことに成功した。「目を覚ませ、ウールワース」代表のティム・ウッズによれば、ウールワースの今回の発表は同社の過去の事例からするとAPP製品の最終的な決別という確証を与えるにはまだ、不確定な要素があることも述べているが、NGOの糾弾を受けるなかで欧米企業が契約を撤回してきた過去の事例とは異なり、市民運動の役割の大きさを認識させる今回のウールワースの例は注目されてよい。ウールワースはこれまでに「精選ブランド(Select Brand)」というラベルのもとに、APPから購入したトイレットペーパーやティッシュペーパーを「持続可能な木材原料」から生産された商品という触れ込みで販売していた。同社はこうした来歴の情報はもっぱらAPPの主張によるものとし、第三者による検証を行った結果のものでないことをすでに認めている。国際森林研究センター(Center for International Forestry Research, CIFOR)の最近のレポートによれば、APPはその調達原料の6~7割を依然として、スマトラの自然林皆伐から得ているという。また、WWFインドネシアの野生生物保護プログラム・ディレクターのナジール・フォアドは、「仮にその紙が植林材由来のものであっても、その植林がサイ、トラ、オランウータンのかけがえのない生息地を犠牲に開発された以上、持続可能であるはずはない」と述べている。

「目を覚ませ、ウールワース」のキャンペーンに参加するCFMEUメンバーと家族。メルボルン動物園のスマトラ・トラのコーナーで。

キャンペーンによる糾弾を受けてからも、ウールワースは同ブランドを、APP社はFSC森林認証を取得する予定であると主張することで擁護しようとしていたという。たしかにAPPが国際市場での競争力を高めるために、世界的な森林認証による「お墨付き」を得ることは同社の生き残りをかけた悲願でもある。しかしFSC認証についてAPPは、自社の植林予定地内のHCVF(保護価値の高い森林)を焼失、伐採したことで審査機関である「レインフォレスト・アライアンス」から契約を解除された。さらにFSC自体も、FSCの別の審査機関SGSが、APPが所有する植林に対してFSCのロゴ使用を認めようとしたところ、多くの環境保護団体から懸念が寄せられた結果、2007年10月に、APPによるFSCの名称とロゴの使用を禁止することを発表、FSC本部は、同社との今後一切の関係を断つことを言明した。

(JATAN Newsletter NO.79号より)

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