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林産物貿易自由化交渉について

 林産物貿易は、GATTにおいて「鉱工業製品」あるいは「非農産物」として分類されています。つまり、林産物は、現在、電化製品や自動車というような工業製品と同じカテゴリーの中で議論をされています。一般的には、林産物には丸太や製材、合板、紙製品、紙製品の原料であるパルプ、木材チップなどが含まれます。ただ、日本では、丸太、製材、合板などは林野庁及が担当として対応しており、紙、パルプなどは経済産業省が管轄することとなっています。つまり、業界として森林組合には林野庁が、そして製紙会社には経済産業省が対応しているわけです。

 当初、ウルグアイラウンド(UR)交渉においては、天然資源産品交渉グループが存在しており、林産物も、このカテゴリーで議論されていましたが、1991年4月の貿易交渉委員会TNCにおいて、天然資源産品交渉グループは市場アクセスグループに吸収されてしまいました。それ以降、UR交渉と、その合意結果としてのWTO協定において、林産物は、「非農産物」として鉱工業製品に分類されています。

 1964年に、日本の林産物貿易の自由化が行われて以来、ケネディ・ラウンド合意(1968〜1972実施)、東京ラウンド(1980〜1987実施)、モス合意(1987〜1988実施)、UR合意(1995〜1999実施)が行われ、少しづつ関税率は引き下げられてきました。特に、1993年12月15日に合意されたUR合意では、1994年での関税率を1995年1月から1999年1月までの間に平均30%引き下げることが決定され、現在の関税水準は、丸太は0.0%、製材は0.0%〜6%、合板は、6.0%〜10.0%となっています。一方で、紙製品関係においては、木材チップやパルプは、0.0%であり、紙製品は、2004年までに、0.0%とすることが既に合意されています。

ウルグアイラウンド交渉

 このUR交渉においては、ECが農業交渉での譲歩を拒み、米国がダンピングでの譲歩を拒んでおり、最後まで大きな問題として残っていました。結局、ECと米国間でのダンピングと農業間での取引が交渉期限の2週間前の93年12月1日に成立、この合意をカナダからの支持を取り付けるための材料として、紙・パルプを含む林産物の関税撤廃が持ち出されてきた(軽部『日米コメ交渉』(中公新書)P155)。しかし日本は紙・パルプ以外の林産物については7月の四極通商大臣会合の時点で決着済みとして反発する一方で、関税撤廃を推進してきた紙・パルプについては合意、10年後(2004年)の関税相互撤廃分野として追加されることとなりました(筑紫『ウルグアイ・ラウンド』P59)。そもそも、日本政府としては、90年6月共和党ブッシュ政権下の米国との協議結果を踏まえて策定した「林産物措置」(いわゆる日米林産物合意」)において、米国の関心品目については実行税率からUR中間レビュー(89年4月)で合意された引下げ率(貿易加重平均で33%)以上の関税引下げを表明しており、93年7月の民主党クリントン政権下の米国を含む四極合意でも、この合意を反映した内容が確認され、UR交渉での最終合意と考えていた。よって、それ以上の関税引き下げとなるような交渉最終段階での、さらなる譲歩となる関税撤廃案には反対するわけです。(「次期WTO農業交渉において、林産物について想定される論点と検討すべき事項について 平成11年3月」

日米二国間通商協議

 ブッシュ政権下の日米構造(障壁)協議(Structural Impediments Initiative:SII)では、マクロ政策から構造的な課題、分野別の問題まで様々な議論が行われてきた。93年以降は、クリントン政権下での日米包括経済協議(Framework)が開始され、マクロ問題、規制緩和の問題、分野別の議論において、住宅分野や紙・パルプ分野、林産物の輸入政策などが議論されてきました。特に、住宅分野は「日米の規制緩和および競争政策に関する強化されたイニシアティブ(Enhanced Initiative)」の5つの優先分野の1つに指定されています。これら協議の中でも、住宅分野、紙・パルプ分野、輸入政策としての木材分野などとして林産物及び関連する建築関連分野の問題が議論されてきています。日本での米国製木材製品の市場を拡大するため、米国は日本に対し、建築基準法、日本工業規格(JIS)、および日本農林規格(JAS)などの規格・基準などで、残された障壁を撤廃することを求めています。これらの障壁によって、輸入建築資材の承認と受け入れが制限されていると考えているからです。品確法についても議論されてきました。こうした方針から、建築専門家会合、JAS技術委員会ならびに木材製品小委員会でも、木材製品や住宅建築資材の問題について話し合っており、これら委員会は、1990年の日米林産物合意の下で設置されたものであり、ウルグアイラウンド合意の内容も、この日米林産物合意に基づいており、多国間の合意にも大きな影響を及ぼすと考えられます。 

 また、紙・パルプ分野では、日本の紙市場が商慣行などで閉鎖的で外国製品が閉め出されていると主張する米国の要請により、日米紙協定:「日本における外国紙製品に対する市場アクセスを増大させる措置」が1992年4月より5年間実施され、米国産の紙シェア(印刷用紙、板紙)の拡大が目指された。しかし、米国の紙市場が供給不足に陥った94、95年に米メーカーは日本への供給を一方的に削減し、「米国は供給義務を盛り込んだ協定を守らない」とのユーザーからの批判などがあった。そして印刷用紙、板紙の輸入量は、92年の45万6千トンから九六年は91万トン程度と五年間で倍増を実現し、「協定は目的を達した」(当時、通産省)と判断から、結局、延長されず、97年4月で終了している。しかし、米国政府は2001年3月に提出された外国貿易障壁報告では、「2000年まで、日本の紙・板紙製品の輸入には、意味のある増加がなく、日本の紙・板紙市場における輸入品の占有率は、依然として主要工業国の中で最も低い水準にある。米国の生産者によれば、排他的な商慣行が依然として主要な問題である」とし、不満を表明しています。

アジア太平洋経済協力(APEC)会合

 1989年に発足し、当初、アジア版OECD(経済協力開発機構)的存在を目指していたアジア太平洋経済協力(APEC)会議は、新たに政権についたクリントン政権の下にある米国の圧力の下に1993年のシアトル会合及び、1994年のインドネシア会合以降、自由化を進める機能が強化され、ウルグアイラウンド合意の前倒し実施を行うために利用されるようになっていきます。特に、1997年のバンクーバ会合において早期自主的分野別自由化(EVSL)が提案されることとなりました。これらは93年末に合意に達したウルグアイラウンド合意=WTO協定を超え、(WTO農業協定とサービス協定が再交渉される予定の)2000年までの空白期間にも、さらに自由化の動きを別の角度から進めるために行おうというものです。特に、このEVSLは、林産物を含む9つの分野について2000年までに相互に関税を撤廃しようというもので、アメリカ合州国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアなどの林産物輸出国らの提案によるものでした。しかし、日本政府が98年のクアラルンプールでのAPEC会合において、APECの原則としてAPEC大阪会合以来、主張していた自主性の重視に基づいて反対し、これらの林産物の関税引き下げについてはWTO交渉に委ねることとなった。一方、APECにおいては非関税措置について議論されており、ニュージーランドの研究所が環境規制、ラベリングを含めた幅広い規制措置に関するレポートをAPEC事務局に提出しています。

 非関税障壁とは、関税以外の貿易を制限する措置を示すが、例えば資源保全目的の輸出入制限措置や、害虫の国内への侵入を防ぐための輸入禁止などの検疫措置、エコラベル、自治体の熱帯材使用削減・禁止の取り組みといった環境保護のための取り組みも含まれます。非関税措置についての話し合いが進められていけば、破壊的な伐採がおこなわれた森林から輸出される木材を差別的に扱おうという政策措置の実施は極めて難しくなります。

世界貿易機関(WTO)

 APECのEVSL提案を引き継ぐ形で米国政府などによって林産物関税相互撤廃提案がATL:Accelerated Trade Liberalization(前倒し貿易自由化措置)としてWTOに提案されることとなりました。米国森林製紙協会(AFPA)は、ATLを支持するために、関税が撤廃されれば世界の林産物の消費が3〜4%増加し、日本では一人当たりの林産物消費量が38〜42%も増加するだろうと予測していました。そして、こうした消費拡大による環境面への懸念についても、貿易自由化推進派の米国の担当者ドン・フィリップ補佐は「もし貿易障壁を下げさせることさえできれば、各国は長期的視野に立って、環境に優しいアプローチをとるようになり、国内の環境政策をそれに応じて作るようになるだろう」(IPS通信)との楽観的で無責任な議論が行われていました。

 しかし、1999年の第三回WTOシアトル閣僚会合においては、様々な分野での利害対立とともに、WTOの意志決定プロセスの不透明性が露呈し、閣僚宣言すら発することもできず、閉幕してしまいました。ATLも、草案段階では閣僚宣言に項目として掲げられていたものの、議論すら行われず、何ら進展はありませんでした。シアトル会合においては、日本政府は、当初、林産物を独立した交渉分野として議論することを提案していた。ケアンズ諸国は、農工一体論の立場から反対し、米国はATLの立場から反対、さらに、農業分野で「多面的機能の友」グループを形成していたEUすら、この独立交渉グループ論に対して反対しており、日本の姿勢を自己中心的(Selfish)であるとして批判していました。シアトル会合中に多面的機能の友グループによって作成されたものの、公表されなかったEU、日本、韓国、ハンガリー、スイスなどによる幻となった「フレンズ・テキスト」において、すでに林水産物独立交渉グループ論は消滅していました。よって、それ以降、日本政府及び与党自民党は、2001年春には、公式にこの独立交渉グループ論を撤回し、環境関連の文言の中に、望みを託すこととなったのです。

 一方で、2001年3月に提出された米国通商代表部(USTR)外国貿易障壁報告には「米国は、日本が2002年から 2004年の間に木材製品の関税を撤廃することを目指して、WTOのいかなる新たな交渉においても、協定締結に建設的な役割を果たすことを引き続き求めていく」と明記していました。

 そして、2001年11月に至り、第4回WTOドーハ会合において、林産物分野を含む「非農産物」分野でも、これまでの関税措置が交渉対象となるとともに、関税以外の様々な非関税措置をも対象とする貿易交渉が開始されることとなりました。2005年1月1日までの3年を期限とする交渉を開始することが閣僚宣言に盛り込まれたのです。2002年1月31日までに、新たな貿易交渉委員会TNCがWTOの一般理事会の下に組織され、交渉が開始されます。

筑紫勝磨編著『ウルグアイ・ラウンド〜GATTからWTOへ』(日本関税協会 1994)

軽部謙介『日米コメ交渉〜市場開放の真相と再交渉への展望〜』(中公新書 1997)

林野庁『林業白書』