2001-8-30
林野庁 貿易対策室 御中 ―――> 森林総合研究所 御担当
I.プロジェクト全体について
1. プロジェクトの目的と到達点
本プロジェクトは、WTO交渉に対応するために、林産物貿易自由化が世界の林産物貿易動向、森林資源の利用、自然環境などに及ぼす影響について評価を行うことを目的とする、とされている。このような目的の設定はかなりあいまいである。このことによって、プロジェクトの進捗が非常に総花的なものになっており、焦点が不明確となっている。もっと具体的な研究目標の設定が必要である。
研究全体の方向性や、統合という観点から、林野庁の目指す最終的研究成果を、どのようなものにするのかもっと明確にすべきである。これによってプロジェクトの方向性は著しく異なってくる。もし、政府内及び林野庁担当部局において、この目標設定自身が懸案であるならば、この目標の設定自身がプロジェクト初年度の中心課題となるべきである。私達は、この研究の戦略目標としては、持続可能性の概念の下での木材貿易の制御を目標とすべきだと考えており、そのための影響評価調査であると考えている。
USTRは次期交渉において、林産物のすべての部門において関税ゼロ化をめざしており、そのような目的をサポートするための林産物貿易早期自由化の影響評価レポートを作成している。USTRのような安直な研究報告ではなく、林産物貿易自由化による環境及び持続可能性への影響を論理的、具体的に示すことに特化した研究成果が必要である。
2.プロジェクト設計について
プロジェクトが、参加研究者の持ち寄り的な体質になっており、全体を統括し、ある方向に向けていくコアが形成されていないようにみえる。このようなプロジェクト運営では、複数の研究者の共同研究における集積のメリットが期待できない。プロジェクト全体を見渡し、研究をどのように進捗させ、着地させるかを常に検討し、個別研究者と折衝していく能力と権限をもった主体の存在がこのプロジェクトにはぜひ必要である。
II.各論
1.モデル分析について
I.で述べたように、戦略目標が明らかでないために、世界モデルおよびUSTRレポートのフォローをすることに多くのエネルギーが割かれ過ぎているようである。地域を限定して、もっと深く掘り下げることにより、世界モデルの不備な点を指摘したり、オルタナティブな方向性を提示することも可能であり、むしろUSTRとは全く異なったアプローチをとったほうが、質的に異なった提言をできる可能性が高い。
そこでどのような方法をとるにしても、まず特定の国、アメリカやカナダなどの北米、ロシア、インドネシアなどに対象国を絞り込んで、持続可能性を維持し、原生林面積や森林面積を維持するためには、どのような政策が必要なのかを検討し、それをシミュレーションするための信頼できるデータを収集することが必要である。つまり森林資源面積や持続可能な森林経営の主要指標となるものなどへの貿易自由化の歴史的・累積的な影響をデータとしてつかんで置く必要がある。またUSTRのように、単に、今後のさらなる貿易自由化の影響を評価するのではなく、これまでの貿易自由化をも視野に入れた上での影響評価を行うということが必要である。
2. 各国研究について
すでに、世界資源研究所の『自由貿易_林産物の国際的取引の自由化:リスクと機会』で、同様のアプローチでアメリカ、カナダ、インドネシアの現状を分析している。したがって結論としてWRIの結論とあまり変わらないものになってしまうかもしれない。また適切な環境施策がない中での貿易自由化が過剰伐採につながる、という論のたて方だけでは、ある意味で両刃の刃になりかねない。つまり貿易自由化自身は問題ではなく、環境施策が適切でないことが問題であり、環境施策を適正化することで対応すればよい、という論理がありうる。これに対抗する論理がない場合、WTO交渉ではモラトリアムに多少貢献する程度になってしまうのではないだろうか。よって、この議論への対応策として、そもそも環境政策の実施が困難なケースや、適切な環境政策自身が、自由貿易といった競争圧力によって採用されにくくなるケース、地球規模の環境問題に対抗するには、各国別の環境政策だけでは不十分となりやすいことなどを示すことを念頭に置く必要があると考える。さらに、たとえ、適切な環境施策、例えば木材認証が各国で普及した場合でも、健全な土地利用と農産物や林産物の自由貿易が両立しない場合が多いことは、論理的に明らかである。たとえば木材認証などが普及して、持続可能な森林管理が徹底されたとしても、木材生産コストが相対的に高い国では、土地利用が森林から農地やエステート作物等に転換されて、結果的に生態系を破壊することを防ぐことはできない。
どのような論理展開をしようとしているのか、林野庁としてのスタンスを明らかにしたうえで、どのような論点について各国研究を行うのか、もう少し戦略的に考える必要がある。
III.研究の方向性についての要請
研究の具体的な方向性については、少なくとも以下のような取り組みを行う必要がある。
1.環境への影響を評価するためには、伐採量の変化だけではなく、伐採量の変化がどのように、環境指標に影響するのかを評価する必要がある。よって、少なくとも森林面積減少や他の環境的指標への影響を各地域で評価することを目標とする。
2.単に、関税ゼロと現状を比較するのではなく、比較対象としては、自由化前の50年代との比較を行うか、最低でもプラザ合意前の1980年代前半か、もしくは、ウルグアイラウンド合意以前の1990年頃をベースラインにした貿易自由化の累積的な影響調査(つまりシミュレーションというよりも、これまでの現状への影響をきちんと評価するということ)を示すことを目標とする。
3.そのために対象地域を北米材(アメリカ・カナダ)、南洋材(インドネシア)、北洋材(ロシア)などに絞り込むことでケーススタディの質を高めることに重点をおく。また、個々の地域の研究目標を明確にする。
4.貿易自由化による影響評価に加えて、持続可能な森林経営確立のために必要な適正な関税率を求めるという方向性を加える。
IV.説明会の開催方法について
1.説明会の日程連絡については関心を持つ市民及び団体に確実に伝わるように、少なくとも2週間以上前にホームページ、電子メール、FAX、郵便、あるいは新聞を含めたマスコミなどの手段で、できるだけ広く告知すること。
2.また、説明会での配布資料は、できるだけ事前に入手可能にすること。当日配布された資料では、資料の内容を検討する時間が制約されるので、なんらかの方法での事前配布が必要。
コメント作成団体 JATAN・熱帯林行動ネットワーク
APECモニターNGOネットワーク
国際環境NGO・地球の友ジャパン