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カナダ

 政府刊行物を読むと、カナダは「広大な天然林に恵まれた数少ない先進国のひとつ」であることを誇りにしているのが分かる。世界の亜寒帯林の3分の1以上と、世界の全森林の10分の1がカナダに存在することは誇るべき事実であろう。しかし、林産業は、この豊かで恵まれた資源のおかげで、1996年に680億ドル(約6兆2000億円)の売り上げと総額110億ドル(約1兆円)の雇用を創出するほどのカナダ経済の要になっていると同時に、カナダの森林生態系破壊の主要因ともなっている。

 カナダの森林の52%は森林伐採権が認められ、オールドグロース(老齢樹)原生林は伐採対象の90%を占める。林業は35万人もの直接雇用を生み出しているにも関わらず、1989年から1992年にかけて、雇用数は34万8,000人からおよそ28万8,000人にまで落ち込んだ。木材伐採における皆伐の手法は、伐採の好景気・不景気の循環を生み、著しく不安定な雇用の要因となっている。それは労働者にとっても、皆伐された森林にとっても不健全な状態である。西部カナダ原生自然委員会によると、択伐などのより持続可能な林業や森林所有権制度の改革によって、森林生態系の保全と雇用者数を維持することができるだろうとしている。しかし、カナダ政府は、政府自身による伐採規制と先住民社会の権利を無視し、低額の立木伐採権料や皆伐などの、世界市場で最も競争力のある方法なら何でも支持してきた。

 少数の多国籍木材企業がカナダの森林を牛耳っている。こうした企業は、補助金や木材会社に有利な法制度によって守られることにより、政府の支援を受けている。立木伐採権料は、木材企業が伐採した木材の量に応じて政府に払う金額のことで、カナダにおける立木伐採権料は特に低額だ。例えば、針葉樹材の立木伐採権料は1m3当たり2ドルで、米国では10ドルである。そして米国はカナダの低額な立木伐採権料が不公平だと頻繁に非難している。その上、この金額は土壌浸食や水質汚染などの環境コストを無視した設定となっている。

 木材企業は森林を皆伐できることからも利益を得ている。毎年の伐採量の80%は皆伐によるものだ。こうした政策は議論の的となっており、カナダはより持続可能な森林政策を推進しようと試みてきている。森林関係当局は伐採可能な木材の割当量である「年間許容伐採量」を設定したが、木材企業はしばしば針葉樹材の年間許容伐採量を超過しており、また年間許容伐採量そのものが持続可能な量よりも高いこともある。1995年にブリティッシュコロンビア州は「森林施行規約」を制定し、持続可能な森林政策の実施を目指した。しかし、1997年までに、木材企業は「規定を簡素化してコストを削減」するために規約を改定することに成功し、環境規制を取り除き、伐採補助金を増やし、外資を奨励する様々な法令を制定した。1998年には、カナダは競争力を回復するため立木伐採権料を16%下げて、補助金を増額した。

 木材企業は、環境保護がされているかどうかに構うことなく、森林経営施業の安全性や持続可能性に関心を払わないことがしばしばである。カナダ国内で最も伐採の進む地域のひとつであるブリティッシュコロンビア州では、皆伐や道路建設による土壌浸食や著しい水質汚染の被害を被っており、サケなどの生物や食物連鎖全体を脅かしている。残念なことに、木材企業はしばしば皆伐した地域での植林を怠り、行った場合も植林地域は回復に失敗しており、400万haもの伐採跡地が荒れたまま放置されている。木材を輸送するための道路建設も森林を破壊し、農業及び住宅地域や、ダム、集落、鉱山の開発への道を開くことになる。

 カナダにおける伐採は、亜寒帯林で10〜25%、ブリティッシュコロンビア州沿岸地域で30〜40%が削減されなければ、持続可能性が達成されないことが事例研究で報告されている。しかし、伐採は既に北部亜寒帯林及びタイガ森林地域を脅かしており、沿岸地域の木材資源はほとんど枯渇してしまった。北部の森林は成長できる季節が短く土壌も貧弱なため、ひとたび切り倒されてしまえば再生するのは難しい。既に亜寒帯林地域の50%に森林伐採権が与えられており、その多くが道路やダム、集落、鉱山によって破壊されている。

 木材企業に森林経営を任せようというカナダ政府の意向は、先住民社会の土地所有権の主張に目をつぶる結果をも生んでいる。100万人もの先住民族やイヌイット、混血人種の多くは、亜寒帯林や温帯林に住み、土地所有権に関する復権論争は物議を醸している。先住民族の中にはブリティッシュコロンビア州の当局の許可なしに森林伐採に着手する者もおり、他方で、当局は先住民の主張を解決することなしに木材大企業に伐採認可を与えている。これには、1988年にアルバータ州政府が日本の企業である大昭和・丸紅インターナショナル社に、争点となっていたルビコン族の伝統的領域である100万haを含む400万haの賃借権を認めた例がある。大昭和が論争地域で伐採を続け、ルビコン族が大昭和社の製品の国際的ボイコットを始めたことで、重大な局面を迎えた。論争は、大昭和がルビコンの領域について再確認し、NGO「ルビコンの友」が大昭和に対するボイコット活動とその他の抗議行動の停止に同意した2000年になってやっと収束したばかりである。

 森林資源に富むカナダには、自国の森林の開発と保護の両方を行わなければならないという難しい課題がある。カナダは持続可能な森林政策の確立を目指してきたが、その達成が困難で木材企業の説得が容易でないことに気付いた。カナダがその優先順位のバランスを取る方法を模索する間も、伐採は北部の森林に進み、オールドグロースを脅かし続けている。

出典:

地球の友

グローバル・フォレスト・ウォッチ

ルビコンの友トロント支部

ビクター・メノッティ(グローバリゼーション国際フォーラム)『自由貿易と自由伐採』