10月20日から23日にかけて、JATANは、APECモニターNGOネットワーク(AMネット)、熱帯林行動ネットワーク名古屋とともに、テラパック・インドネシアのメンバーを招き、違法伐採と大規模アブラやし農園開発に関する講演会を全国4ヶ所で開催しました。今号では、その違法伐採に関する講演内容を紹介します。(農園開発の分は次号)
みなさんこんばんは。私はハプソロと申します。テラパック・インドネシアというNGOからやって来ました。私は今回ファイナルカットというタイトル、最終段階に入った伐採というテーマで、インドネシアにわずかに残った森林、国立公園における違法伐採についてお話します。今日は、私たちがロンドンにある環境調査機関というNGOと合同で、これまで2年間にわたって調査をしてきた結果をお話したいと思います。
みなさんもよくご存知の様に、インドネシアには広大な面積の熱帯雨林がありまして、ブラジル、コンゴ民主共和国(旧ザイール)に次いで世界第3位の面積を持っております。その中には数えきれないくらい多くの植物や動物が存在しており、そしてインドネシアは木材の産地としても有名です。ゴムやラタン(籐)、薬草等の森林資源がたくさん存在しています。
しかし、この豊かな森林資源はますます減少しているという問題があります。これは、1970年代から始まった森林伐採によるものです。最近の調査によると、インドネシアでは年間108万ヘクタールの森林が消失していると言われています。その主な原因は、森林伐採やプランテーションの急激な拡大、そして97年から98年にかけて起きた森林火災です。
現在、インドネシアの森林伐採の60%が違法伐採によるものだと言われています。このような違法伐採は、インドネシアの森林資源を保全するという点で大きな問題になっています。そして、最近2年間に関して言えば、インドネシアの森林破壊の大きな原因が違法伐採であるということは、ほとんどの人が知っております。なぜこんなに知られているかといいますと、違法伐採が自然保護地区などで行われているからです。
違法伐採は、これまでに森林伐採権による伐採が行われ、そしてプランテーション開発が行われ、その後にやってきたものなのです。そして、違法伐採は国内の法律や国際的な法規を全て無視して行われておりますし、汚職や癒着といった問題とも関わっています。違法伐採には、業者だけではなく、国会議員や最大政党の党員、行政や国の役人、警察や軍、そしてマレーシアの人たちも関わっています。
違法伐採は私たちの貴重な生態系を破壊するので、私たちとしては地球を守るためにも是非止めたいと思っています。森林は私たちに食料を供給しますし、私たちの生活のための衣料などの原料も供給します。私たちの生活を支えてくれるものです。違法伐採は非常に簡単な方法で木を伐採してしまいますが、森林は私たちの先祖が何百年にもわたって育ててきたものなのです。
森林の中や近くに住む先住の人々や地域の人々は、その生態系を構成している一部であると私たちは考えております。ですから、彼らを追い出したりしてはいけないと思います。そして、森林には多様な生物が生息していますが、その多くが絶滅の危機に瀕しています。サル、ゾウ、バクなどがいますし、また、霊長類の中では、みなさんもよくご存知のオランウータンが生息しています。
違法伐採は豊かな生態系あるいは多様な生物が住んでいる生息地を破壊しているのですが、その生息地とは、私たちの調査対象で言いますと、野生生物の保護地域に指定されているグヌン・ルーサー国立公園ですとかタンジュン・プティン国立公園になります。
地域の人々の生活に目を向けてみますと、先住の人々、インドネシアの人々は大部分が都市から離れた森林の中や森林の周辺に住んでいて、生活の糧を森林資源に大きく依存しています。そして、今でも狩猟採集で生計を立てている先住の人々もいます。しかし、都会の人間がやってきて、先住の人々を奴隷の様に扱い、彼らが生計を立ててきた森林を伐採し、荒らしているのです。そして、都会の人々は、先住の人々を安い賃金で使って木を切ったり、森林資源を採集しています。安い労賃で得た森林資源を高く売るわけですから、森林資源から得られた利益はほとんど都会の人に持っていかれるという構造になっています。
これが実際に起こっていることなのですが、森林破壊の原因の責任はいつも先住の人々が負わされています。彼らは本当は森林資源を持続可能な形で管理し利用している、ということを全く顧みることなく、先住の人々が森林破壊の原因とされています。ですから、インドネシアの場合は、生物の多様性とともに、先住の人々の生活が違法伐採によって脅かされているのです。
そして、インドネシアでは、ほとんどの森林が破壊されたため、わずかに残っている貴重な森林が違法伐採によってまた失われていくということになっています。先程も言いましたように、違法伐採は行政、政府、政党、警察や軍などによって支えられているのです。
私たちは、自然保護地区、例えばタンジュン・プティン国立公園などで行われている違法伐採について、インドネシア政府とともに、国際社会にも真剣に向き合って欲しいと思います。具体的には、違法伐採を支えている人たちを裁判にかけて制裁することや、違法伐採を行っている伐採会社や製材所などをすぐに閉鎖することを訴えたいと思います。そして、国際社会に対しては、消費者はインドネシアからの木材が、本当に合法的に生産されたものであるということを、確認して欲しいと思います。自分たちが使っている木材の多くが、違法伐採によって生産されているものかどうかということを、是非チェックしていただきたいと思います。
私たち個人として何ができるかといいますと、決して違法伐採によって生産された木材を使わないことだと思います。そして、それぞれの政府に対して、東南アジアから生産された木材についてモニタリングするように働きかけて欲しいと思います。最後に、一番簡単なことですけれども、熱帯雨林から生産された木材は過剰に消費しないようにして欲しいと思います。
私からの話は以上です。みなさん御静聴いただきましてありがとうございます。
Q.先程、我々がするべきこととして、自分たちが使っている木材が、違法に伐採されたものかどうかをチェックしていくべきだとおっしゃっていましたが、我々としては違法伐採されたものかどうかわかりません。そういうもののチェックの方法はどのようにしたらいいのでしょうか。
A.私たち一般の人間にとっては、違法伐採されたものか合法的に生産されたものかというのはわからないので、難しいと思いますが、簡単にわかる方法があります。最近の統計によりますと、ラミン材の輸入大国が4つあるのですが、日本はその中のひとつです。ラミン材は家具や木製のブラインドに使われていますが、最近のものの場合、90%は違法伐採されたものだと考えていいと思います。
Q.そもそもアブドゥル・ラシッドという人に森林伐採権が与えられたこと自体が違法だと思うのですが、どうしてそれが可能だったのでしょうか。また、アブドゥル・ラシッドは最終的にゴルカル党の候補として議員に推薦されたとありますが、今、国民協議会の中に議員としているのでしょうか。
A.本当にアブドゥル・ラシッドという人は興味深い人ですけれども、実は彼は森林伐採権をひとつも持っていません。ただ木材製材所は持っています。これまで彼は4回森林伐採権を申請したのですが、全部却下されてまだひとつも持っていません。ですから彼がやっていることは違法であるということがわかると思います。国民協議会については、候補者として推薦された訳ではなく、自分で立候補したのです。私たちは彼を批判したのですが、それでも彼は中央カリマンタン州では力を持っている。要するに買収する力を持っているわけです。去年の総選挙の際にも、30くらいの政党を買収して、彼が国民協議会の議員になるための買収工作をやって成功して、今も一番偉いと言われる国民協議会の議員になっています。
アブドゥル・ラシッドは、ロビンフッドのような人間と言われています。非常に良い行いをする。高齢者の人ですとか養護施設などに寄付をしますし、またモスクの建設にも寄付することで非常にいい人間だと言われています。しかし、私たちが実際に調査をしてわかったことは、彼はカリマンタンだけではなく、マレーシアでもかなり活動していて、東南アジア最大の違法伐採のシンジケートのひとつを牛耳っているということです。
Q.インドネシアから日本に合板などの木材製品が大量に輸入されていますが、インドネシアから輸入されている合板のほとんどは違法伐採されたものと理解していいのでしょうか。
A.ラミン材はほとんどが家具用材として使われていますので、合板はまた違うと思いますが、ただ、合板の場合もまた別の意味で違法伐採であると言えると思います。合板の場合は、アブドゥル・ラシッドのような人ではなくて、実際に森林伐採権を持っている会社が生産しているのですが、自分たちのコンセッション以外のところで切ったものとか、本当は択伐と言いまして、直径何センチ以上でないと切ってはいけないということになっているにも関らず、それよりも小さいものを切ってしまう、あるいは水源涵養区として指定されていて、そこは切ってはいけないというような所でも切っている、というようなことが行われているという意味では、合板も違法伐採されたものであると言えると思います。■
【コラム】ラミンについてボルネオ島やマレー半島、フィリピンに分布している樹種。現在は、伐採により資源が急激に減少しており、インドネシアの場合、国立公園以外ではほとんど見られないと言われている。日本では、安く高級感のある木材として、床板や家具(ベッド、ウッドスクリーン、ドア枠、鏡台)などに用いられている。しかし、講演にもある通り、それらは国立公園内で違法に伐採されたものである可能性が高い。 ラミン材の家具は買わないように、気を付けましょう! |
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