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「紛争パルプ」と日本の関係―RGE グループのパルプ分野企業による問題事例―


【画像】TPLによるユーカリ植林を阻止する先住民族グループ(撮影Pranowo Adi 2021年6月)

ロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループ(RGEグループ)はシナール・マス、サリムグループなどと並ぶインドネシアの巨大財閥のひとつである。その傘下で製紙・パルプ部門を担うエイプリル社が生産するコピー用紙などの紙製品は日本を含む世界中の多くの国に輸出されている。エイプリル社は最近、製紙用パルプのほかに、ビスコースレーヨンの原料である溶解パルプの生産をはじめた。エイプリル社に木材原料を調達する多くのサプライヤー企業は政府から付与された強大な開発利権を嵩に、泥炭湿地の掘削、熱帯林の皆伐、アカシア植林の造営を推し進め、自然環境の深刻な改変、地域住民との土地利用をめぐる多くの紛争を引き起こしている。グループの総帥スカント・タノトはエイプリル社のほかにも北スマトラのトバ湖周辺にトバ・パルプ・レスタリ社というパルプ製造の企業を所有する。トバ・パルプ・レスタリはその前身にあたる工場の操業以来今日にいたるまで、トバ湖周辺のバタック人コミュニティや周辺住民とのあいだで熾烈な土地紛争を繰り広げている。エイプリル社とトバ・パルプ・レスタリ社、そして中国を拠点とするRGEグループのレーヨン製造企業による溶解パルプの輸出業務をめぐっては、虚偽の輸出申告疑惑がNGOやメディアから告発され、国際的にも大きく問題化されている。

RGEグループのコピー用紙は日本でも販売されており、大手商社や通販サイトなどで多数、販売され、そうした購入企業へは3メガバンクからの企業融資も行われている。3メガバンクの融資方針には生産企業に対する規定はあるものの、3メガバンクともに、問題企業からの製品を利用する購入企業への融資方針はなく、改善が必要である。

RGEグループのパルプ部門の中核企業であるエイプリル社に対して直接的に融資を行なっているのは、三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)で、継続的な融資が行われている。MUFGの方針では、人権侵害を引き起こしている状況や環境的な保護価値が失われている状況では、環境・社会配慮が十分ではなく、ファイナンスは行われるべきではないと考えられる。ところが、実際には、MUFGが、エイプリル社に継続的に融資を行っており、自ら策定した方針に違反しているのではないかとの疑念が拭えない。FSC認証から関係断絶措置を受けているエイプリル社のような企業への融資を行うことには大きな問題があると言わざるを得ない。MUFGは、森林セクターの方針を改定して、少なくとも、PEFC認証を取得していたとしても、FSC認証から関係断絶措置を受けている企業については、融資対象としない方針に改定する必要がある。またNDPE方針とFPIC尊重を顧客パルプ生産・購入企業に求めることも重要である。

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本報告書の作成にあたってはスウェーデン国際開発協力庁(Sida)の助成を受けています。

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