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インドネシア・南スマトラ:丸紅およびMHP社に対する要望書を提出

2021年06月30日掲載

2021年6月21日、熱帯林行動ネットワークは他NGO、研究者とともに、丸紅株式会社と同社の100%子会社であるムシ・フタン・ペルサダ社(PT. Musi Hutan Persada, MHP)に対して要請書を提出しました。

要請書では、MHP社がインドネシア・南スマトラ州の同社事業地内に居住していた住民に対して2015年7月、2016年3月の二度にわたり強行した強制排除に関して、5年が経過した今でも生活の基盤を失った住民たちの生活再建は実現しておらず、同社が十分な社会的責任を果たしていないこと、そして十分な住民の生活再建支援を実施すべきことを求めています。

【関連記事】
チャワン・グミリール集落の強制排除 ー丸紅は解決に向けて主導的な役割を果たし, 一刻も早い住民の生活再建を保障すべきであるー(2017年02月12日)
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要請書本文は以下の通りです。
PDFファイル(日本語)/217KB

元チャワングミリール集落住民の生活再建のための支援にかかる要望書

丸紅株式会社
代表取締役社長 柿木 真澄 様

PT. Musi Hutan Persada
代表取締役社長 中林 靖治 様

時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

御社の子会社であるムシ・フタン・ペルサダ(Musi Hutan Persada)社の事業地内に暮らしていたチャワングミリール集落住民が2016年3月にその土地(以下、チャワン)から強制的に排除されてからすでに5年が経過しました。

この間、私たちはチャワングミリール集落住民とMHP社との間の土地をめぐる紛争の解決に向けて御社に働きかけてきました。2016年9月には、国際環境NGO FoE Japan、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)、インドネシア民主化支援ネットワーク(NINDJA)が、解決に向けた対話と解決に至るまでの間の避難民に対する食料などの支援を求める要望書を送付しました。また、2016年から10月から2018年3月にかけて、この要望書の送付人である三柴淳一、原田公、川上豊幸らが、御社広報部 CSR・地球環境室の方々と7回にわたり会合を持ち、この問題の解決にむけた取り組みを要請してきました。

それを受けて、MHP社は、住民に対する支援活動を行っている南スマトラのNGO、インドネシア環境フォーラム・南スマトラ(WALHI Sumatra Selatan)との会合を持ち、政府を交えた三者間で具体的な問題解決に向けた議論をすすめていくことを約束するなど、一定の努力を払ってこられました。しかし、元チャワングミリール集落住民をめぐる状況は実質的には改善されていません。生計手段を失った住民の多くは、農業労働者や日雇い労働者として、現在も不安定な日々を送っています。強制排除が住民のその後の人生に与えた影響を考えると、一刻も早い生活再建のための支援が必要だと私たちは考えます。

この要望書の送付人の一人である笹岡正俊は、現地でおこなった聞き取り調査、御社に送付した「質問状」に対するご回答、そしてチャワングミリール集落の形成や強制排除にかかわる様々な資料をもとに、これまでに二つの論稿を公表しました(添付資料参照)。

それらの論稿が指摘しているように、MHP社およびその親会社である御社は、以下の理由から、強制排除によって生活の基盤を失った住民たちの生活再建に対する社会的責任――法的責任を超えた責任――を負うべきであると私たちは考えます。

第一に、チャワンにおける大規模な不法占拠を生み出した背景には、MHP社による不十分な事業地管理がありました。MHP社は、住民が「違法に」耕作し、居住していた土地が、企業の事業地内の保全区域であることを明確に示したり、そこを耕作する人が現れ始めた段階で早期にそれを食い止めたりする取り組みを十分に行ってきませんでした(詳細は添付資料を参照のこと)。このことが、大量の「不法占拠者」がチャワンに流入すること、および、彼らが入植地を生産的な土地に変え、集落のインフラを整備するための労力を数年間にわたって注ぎ込むことを可能にし、強制排除による被害を拡大させました。

第二に、強制排除は御社の定める「人権基本方針」に反しています。事業地内の土地の管理について大きな権限が付与されているMHP社は、強制的な手段に頼らない問題解決の道を探ることができる立場にありながら、住民と十分な話し合いの場を持つことも、適切な代替措置を講じることもなく、不法占拠問題を解決するための手段として、強制排除を選択しました。そして、県林業局に不法占拠者を退去させるための支援を要請し、その要請に基づいて強制執行が行われています。国際人権規約の解釈によると、強制立ち退きは「不法占拠者」が一般的な公共性を損なうと立証された場合に、様々な手段を講じても、なおそれが必要と判断されたときに行われる「最後の手段」だと考えられていますが、今回の強制排除は、取り得るさまざまな手段を講じた後にやむを得ず「最後の手段」として行われたものとはみなせません。こうした問題解決のやり方は、御社が定める「人権基本方針」に反するものです。

第三に、MHP社の要請により行われた強制排除とその後のMHP社の対応は、元チャワングミリール集落住民が所有していた「地上物」に対する財産権を踏みにじるものです。先述の通り、チャワンに人びとが「違法」に入植してから数年間、彼らの「違法」集落は放置されてきました。その間、人びとは土地に労働力と生産資材(苗や除草剤)を注ぎ込み、そこを生産的な農地に変えてきました。その土地がたとえ「違法」に取得されたものであるとはいえ、人びと労働力と資金を投入して作った農作物(ゴムやキャッサバなど)や家屋などの地上物は彼らの財産として認められるべきものです。しかしながら、強制排除によって破壊された地上物に対する補償は現在まで行われていません。このことは、倫理的観点から問題があると私たちは考えます。

以上を踏まえて、私たちは御社に以下の点を要望いたします。

1. 元住民のチャワンへの帰還の可能性の検討

多くの住民はチャワンに帰還し、ゾウと共存できる村の再建を望んでいます。一方、御社はそこがゾウの生息地であり、保全区域を維持すべきとの意見が環境林業省内にあること、および、帰還後に住民とゾウとの衝突が想定されることから、住民のチャワンへの帰還に否定的です。しかし、そもそも、住民が帰還を希望している土地がゾウの保全上どの程度重要なのか、また、ゾウと住民との軋轢が回避不可能なのか否かを判断するに足る十分な生態学的知見は実のところまだありません。南スマトラ州自然資源保全局職員に確認したところ、当該地域を利用するゾウの季節的ハビタット利用パターンや食性詳細な生態学的調査はまだ行われていないということでした。したがって、まずは、MHP社および御社のイニシアティブのもと、政府組織(環境林業省など)、インドネシア環境フォーラム・南スマトラ、専門家(生態学者など)と協力しつつ、C集落住民が元居た場所に帰還し、ゾウと共存する集落を建設することが可能なのかを検討していただくこと、そして、その検討のプロセスで明らかになった知見を広く関係者に共有していただくことを要望いたします。

2. 適切な代替地の提供(帰還が難しいと判断された場合)

上記の検討の結果、仮にチャワンへの帰還が難しいと判断された場合、MHP社および御社の責任において、住民の納得のゆく代替地の提供と生活基盤の整備をしていただくことを要望します。2018年1月にMHP社はチャワングミリール集落住民に移転先の提供を提案しました。移転先として挙げられたのは、別の集落の住民がMHP社と係争中の土地であり、将来、土地をめぐって当該集落住民と争いが起きる可能性のある土地でした。またこの土地は雨季によく浸水する場所でもありました。これらのことから、チャワングミリール集落住民代表らは、この移転案に反対したことはご存知の通りかと思います。代替地を提供する際には、移転がチャワングミリール集落住民および移転先周辺住民もたらす長期的な影響を考慮しつつ、最適な土地を住民との協議を重ねて選定していただくことを併せて要望いたします。

3. 強制排除時に破壊された地上物への補償

上で述べた取り組みに加えて、強制排除によって破壊された地上物に対する補償をしてください。チャワンに移住してきた人たちの多くは、元居た場所に農地を持たないか、持っていてもわずかばかりの土地で、農業労働者やその他の日雇い労働者として働いたり、出稼ぎに出たりして、生計を立てていた人たちです。彼らは出身地にあった家屋やなけなしの農地を売り払い、それによって得た現金を元手にチャワンに農地を開き、家屋を建設しました。チャワングミリール集落住民が耕作・居住していた土地がたとえ「違法」に取得されたものであっても、先述の通り、彼らが労働力と資金を投入して作った農作物や家屋などの地上物に対しては彼らの財産権が認められるべきです。

4. 今後の取り組みについての文書でのご回答

上記3点について、今後どのように対応されるご予定かを文書でご回答いただきたく存じます。さしあたり、いつまでにご回答いただけるかをお知らせいただけますと幸いです。

紙・パルプ業界を先導する御社の影響力は極めて大きく、御社に期待される社会的責任は甚大です。御社が定めている「人権基本方針」の理念に立ち返って、責任あるご対応を切に願います。

2021年6月21日

【添付資料】
・資料 (1) 笹岡正俊. 2021. 「人びとはなぜ「不法占拠者」になったのか 強制排除された人びとの生活再建に対する社会的責任」,笹岡正俊・藤原敬大編『誰のための熱帯林保全か―現場から考えるこれからの「熱帯林ガバナンス」』,新泉社, pp. 196-219.

・資料 (2) 笹岡正俊.2020. 「強制排除された「不法占拠者」の生活再建に対する社会的責任―インドネシア南スマトラ州の産業造林地における強制排除事件を事例に」,『白山人類学』23号,pp. 73-102.

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【参考】

MHPがチャワン集落の強制土地収用後の「保全地域」に新規植林したアカシア林(撮影2019年9月 鈴木偉斗)

MHPがチャワン集落の強制土地収用後の「保全地域」に新規植林したアカシア林(撮影2019年9月 鈴木偉斗)

MHP がチャワン住民の移転先として提供した土地(撮影2019年8月 笹岡正俊)

MHP がチャワン住民の移転先として提供した土地(撮影2019年8月 笹岡正俊)

MHPの重機で破壊された住民のゴム園跡地(撮影2019年9月 Suban Ulu Semangus村)

MHPの重機で破壊された住民のゴム園跡地(撮影2019年9月 Suban Ulu Semangus村)

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